脳卒中科
スタッフ紹介
職名 | 氏名 | 卒業年 | 学会専門医資格等 |
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科部長 | 田中 悠二郎 | 平成19年卒 | 日本脳卒中学会専門医・指導医 日本脳卒中の外科学会技術認定医 日本脳神経血管内治療学会専門医・指導医 日本脳神経外科学会専門医・指導医 がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了 医学博士 |
医長 | 伊賀崎 翔太 | 平成26年卒 | 日本脳卒中学会専門医 日本脳神経血管内治療学会専門医 日本内科学会 認定内科医 日本神経学会 神経内科専門医 |
医長 | 菊田 朗 | 平成28年卒 | 日本脳神経外科学会専門医 がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了 |
医員 | 小笠原 一源 | 平成12年卒 | がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了 |
科紹介
脳卒中とは、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血を指します。突然体の半分が動かなくなる、うまくしゃべれなくなる、意識が悪くなる、などの症状に代表される脳卒中は緊急性の高い疾患で、当院では年間400人程度の脳卒中の患者さんが入院しています。救急疾患であるため、ほとんどの患者さんは救急外来を経由して入院します。
脳卒中に対する治療には、大きく分類すると以下の3つの方法があります。
- 服薬や点滴、 血栓溶解療法などの内科的治療
- カテーテル治療(脳血管内治療)
- 外科手術
これらの治療は従来、脳神経内科や脳神経外科が手分けをしながら担当してきました。しかし近年、カテーテル治療は大きな発展を遂げ、脳卒中の治療において大きなウエイトを占めるようになってきました。内科医であっても外科医であっても、脳卒中を専門とする医師は積極的にカテーテル治療を習得するようになり、脳卒中診療においては従来の「内科」「外科」という枠組みが馴染まなくなってきています。
一方、脳卒中診療の重要な要素のひとつに、「再発予防」があります。
脳卒中の再発率は非常に高く、10年間で50%程度という報告もあります。再発を防ぐための第一歩は生活習慣の見直しや生活習慣病の治療ですが、一般的な検査では原因の特定できない脳卒中も少なからず存在します。患者さんひとりひとりの状態に合わせて特殊な血液検査、血管エコー、経食道エコー、ホルター心電図、埋込型心電図、プラーク評価、カテーテル検査など、さまざまな精密検査を行ったうえで総合的に判断する診断力が必要となります。このような「内科的診断技術」は脳神経内科の医師が得意としてきた分野です。
また、カテーテルが発達してもなお、外科医が頭を直接開けなければ救えない脳卒中は依然として存在しています。脳卒中を予防するために、脳動脈瘤クリッピング術やコイル塞栓術、バイパス術などの外科手術を要する患者さんも少なからずおり、脳神経外科において脈々と受け継がれてきた技術の重要性は今後も変わることはありません。
「内科的診断技術」「カテーテル治療」「脳神経外科手術」は脳卒中診療に欠かせない3つの重要な柱といえます。いずれかに精通した内科医・外科医が集結することで、より質の高い脳卒中診療ができるようになると考え、わたしたちは従来の科の垣根を超えてあらたに脳卒中科を立ち上げ、脳卒中の専門チームを作りました。
ひとことで脳卒中といっても重症度や患者背景はさまざまで、子どもからご高齢の方まであらゆる年齢層で発症しうる病気です。当院の脳卒中科はコミュニケーションや情報共有を重視し、総合病院の強みを最大限に生かして、あらゆる脳卒中に対応しています。
脳卒中診療の実際

内科的診断
(経食道エコー)

カテーテル治療
(血栓回収療法)

脳神経外科手術
(開頭血腫除去術)
科の目標
脳神経外科・脳卒中科の目標 (PDFファイル: 1.2MB)
血栓回収療法

治療前

治療後

回収した血栓
これは血栓回収療法と呼ばれる、太い血管がつまってしまった重症の脳梗塞(主幹動脈閉塞)患者に対して行われる血管内治療です。通常脳梗塞は「血栓」と呼ばれる血のかたまりによって血管が閉塞しているため、専用のカテーテルを用いて血栓を機械的に取り除くのが血栓回収療法です。rt-PA静注療法(血栓を薬で溶かす治療)などの従来の治療法のみを行った場合と比較して、明らかに後遺症を残す可能性を下げることが科学的に証明されています。発症から長い時間が経過してしまうと行うことが難しくなってしまいますが、近年rt-PA静注療法とともに治療の適応が拡大されつつあります。この治療はカテーテルを用いて行う「脳血管内治療(脳血管内治療(カテーテル治療)について」のひとつであるため、施行できる医師は限られています。3次救命センターを持つ当院は志太榛原地区の重症脳卒中が多く搬送されるため、脳血管内治療に携わる医師を多く配置し、24時間365日体制で血栓回収療法を行うことが可能です。
院内体制の整備と治療適応の拡大によって、当院では血栓回収療法やrt-PA静注療法の件数が年々増加しております。血栓回収療法に用いるカテーテルの進歩も目覚ましく、太い脳血管のみならず、中小血管の閉塞を標的としたカテーテルの登場によって、今後さらに治療対象となる患者さんが増えることが予想されます。
治療件数の推移

脳梗塞が発症してから、詰まった血管を再開通させるまでの時間が早いほど、後遺症の可能性は低減します。重症の脳梗塞が疑われた際には、発見者は様子を見ずにすぐに救急要請をする必要があります。救急隊は本治療を行える病院に搬送する責務があります。搬送後は適切な初療と診断を速やかに行い、遅滞なく本治療を開始する必要があります。術者は安全かつ確実に、詰まった血管を再開通させなければなりません。この治療の恩恵を受けられる患者さんがひとりでも増えるよう、救急搬送のしくみ作りや病院連携、啓蒙活動などに力を入れ、搬送後はなるべく早く診断・治療が行えるように救命救急センターにおける体制の整備、シミュレーション活動などに取り組んでいます。
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更新日:2023年11月15日