鼠径ヘルニア(だっちょう)のおはなし
小児外科
鼠径ヘルニア(だっちょう)のおはなし
- このホームページでは、鼠径ヘルニアについての説明をしています。
どんな病気?
写真の様に脚の付け根や陰嚢が膨らんでいます。
押すと戻ります。
普通は、痛くありません。
(痛みがあったら、要注意!)
さて、中はどうなっているのでしょう?
図の様に腹膜の一部が袋状に飛び出しています。
ここに腸や卵巣などが入る事により膨らんできます。
原因は?
なぜ、こんな袋ができてしまったのでしょう。
実は生れてくる前には、すべての人にこの袋があります。
男の子の場合
女の子の場合
本来なら、図の様に自然に消失するべきこの袋が、残ってしまっている状態です。
家族の中に同じ病気の人がいることは多いのですが、明らかに遺伝だと言う証拠はありません。
まあ、「100人に5人いる」と言われていますから、あまり気に悩まない事です。
自然に治る?
生後まもなくの頃は、袋が自然に消失する可能性があるとされています。
しかし、ある程度成長した後は自然消失する事はないともいわれています。
ところが、膨れなくなる事があります。
(腸が出なければ、膨らまない)
この場合、袋は残っている可能性がありますので、
将来的に再発する可能性があります。
嵌頓について
飛び出した腸管が、袋の入口で締め付けられた状態を嵌頓と言います。
このとき、腸管の血流が悪くなりますので激痛が生じます。
このまま放置した場合、腸管が傷んでしまい場合によっては、腸穿孔を起こす可能性があります。
また、精巣や卵巣にも障害が残る可能性もあります。
嵌頓の症状
どんなに大きくなっても、本人の機嫌が良ければ、大丈夫!
対処方法
嵌頓の可能性は、少ないと思います。
大きくなって来たり、心配であったら、早めに外来へ。
- 突然、激痛!
- 機嫌が悪い!
- いつもより硬い
- 触ることを嫌がる
- 色がおかしい
対処方法
嵌頓の可能性があります。
すぐに直す必要があります。
嵌頓の対処方法
- 押し戻してみる。
その場で直してあげられれば、BESTです。 - だめなら無理をせず、救急外来に電話。
- 救急外来受診。
外科、あるいは小児科の医師が手で陥頓を戻します。どうしても戻らない場合には、緊急手術が必要になります。
嵌頓を起こす前に手術を!
嵌頓を起こすかどうかは、誰にもわかりません。しかし、嵌頓では、緊急手術が必要になる事があります。緊急手術では、合併症を起こす可能性が高くなります。
緊急手術の可能性があるのなら、元気なときに予定手術で、より安全に手術を行なった方が良いと考えています。
鼠径ヘルニア根治術
図のような傷で手術をします。おなかのしわに沿った傷です。
傷は、溶ける糸を使い、皮膚の内側で縫い合わせるため、抜糸はありません。
個人差がありますが、かなり目立たないものになります。
男の子の手術
腸が出ている袋(ヘルニア嚢)は、精巣を栄養する血管精巣動静脈や、精子を送る管(輸精管)に沿って伸びています。
これらの血管や管を袋から離し、袋だけを根本で縛ります。切り離した袋については、切り開きます。
手術が終了したときの様子です。切り離した袋は、自然に小さくなっていきます。
女の子の手術
腸が出ている袋は、子宮を固定している子宮円靭帯に沿って伸びています。
袋の根本を靭帯と一緒に縛ります。大きな袋は切り開いておきます。
手術が終了したときの様子です。切り離した袋は、自然に小さくなっていきます。
卵巣や卵管が、袋の中に脱出している場合があります。この場合、それらを一緒に縛らないための工夫が必要になる事があります。
手術時間等
手術時間
30分くらい
手術室にいる時間
1~1時間30分
入院期間
日帰り又は、1泊
手術日
- 月曜日
小さい子 - 金曜日
大きい子だけ
術前検査
安全に全身麻酔が可能かを確認 します。
手術日決定時に採血とレントゲン検査を行ないます。
手術前の金曜日に外来受診(麻酔科)。 術後は、2〜3回外来通院の予定です。
合併症
次のような合併症が生じることがあります。
感染
清潔な手術室で感染には十分注意してはおりますが、稀に傷口が化膿することがあります。その場合、消毒・内服薬などが必要になります。
痛み
小児の場合、軽度で済むことがほとんどですが、場合によっては鎮痛剤を使用します。
また、特に小さなお子さんの場合、病室へ帰った時に大騒ぎをすることがあります。これは、時間と共に落ち着いてきますので、心配ありません。
発熱
手術当日は38度前後までの発熱をする事がありますが、ほとんどの場合翌日には軽快します。
腫れ
手術をした場所が腫れることがあります。これは自然に軽快しますのでご安心ください。
出血
体の表面に近い部分の手術ですから、大量出血の可能性は、まずありません。
全身麻酔
子供の手術には、全身麻酔が必要です。これについては、麻酔科より説明があります。
再発
術後に10人に一人の割合で反対側のヘルニアが出現する事があります。
ご質問はこちら
電子メール・電話等での御質問では、実際に診察させていただいておりませんので、責任のある回答はできません。御了承ください。
藤枝市立総合病院
小児科 小児外科外来 毎週金曜日 午後2時~
郵便番号 426-8677 静岡県藤枝市駿河台4-1-11
電話番号:054-646-1111(代表)
ファックス:054-646-1122
- この記事に関するお問い合わせ先
更新日:2020年05月07日