鼠径ヘルニア(だっちょう)のおはなし

小児外科

鼠径ヘルニア(だっちょう)のおはなし

このホームページでは、鼠径ヘルニアについての説明をしています。
鼠径ヘルニア(だっちょう)の説明をしている医師のイラスト

どんな病気?

写真の様に脚の付け根や陰嚢が膨らんでいます。
押すと戻ります。
普通は、痛くありません。
(痛みがあったら、要注意!)

鼠径ヘルニアにより脚の付け根や陰嚢が膨らんでいる様子の写真

さて、中はどうなっているのでしょう?

図の様に腹膜の一部が袋状に飛び出しています。

男性の腹膜の一部が袋状に飛び出している様子のイラスト
女性の腹膜の一部が袋状に飛び出している様子のイラスト

ここに腸や卵巣などが入る事により膨らんできます。

正常な腹膜で腸や卵巣などが入ってない様子のイラスト
袋状に飛び出した腹膜の一部に腸や卵巣などが入っている様子のイラスト

原因は?

なぜ、こんな袋ができてしまったのでしょう。

実は生れてくる前には、すべての人にこの袋があります。

男の子の場合

図1
図2
図3
図4

女の子の場合

図5
図6
図7
図8

本来なら、図の様に自然に消失するべきこの袋が、残ってしまっている状態です。
家族の中に同じ病気の人がいることは多いのですが、明らかに遺伝だと言う証拠はありません。
まあ、「100人に5人いる」と言われていますから、あまり気に悩まない事です。

自然に治る?

生後まもなくの頃は、袋が自然に消失する可能性があるとされています。
しかし、ある程度成長した後は自然消失する事はないともいわれています。
ところが、膨れなくなる事があります。

再発する可能性のある構図

(腸が出なければ、膨らまない)
この場合、袋は残っている可能性がありますので、
将来的に再発する可能性があります。

嵌頓について

飛び出した腸管が、袋の入口で締め付けられた状態を嵌頓と言います。
このとき、腸管の血流が悪くなりますので激痛が生じます。

嵌頓のイメージの画像

このまま放置した場合、腸管が傷んでしまい場合によっては、腸穿孔を起こす可能性があります。
また、精巣や卵巣にも障害が残る可能性もあります。

嵌頓の症状

機嫌が良いときのイメージ画像

どんなに大きくなっても、本人の機嫌が良ければ、大丈夫!

対処方法

嵌頓の可能性は、少ないと思います。
大きくなって来たり、心配であったら、早めに外来へ。 

機嫌が悪いときのイメージ画像
  • 突然、激痛!
  • 機嫌が悪い!
  • いつもより硬い
  • 触ることを嫌がる
  • 色がおかしい

対処方法

嵌頓の可能性があります。
すぐに直す必要があります。

嵌頓の対処方法

電話をしている画像
  1. 押し戻してみる。
    その場で直してあげられれば、BESTです。
  2. だめなら無理をせず、救急外来に電話。
  3. 救急外来受診。

外科、あるいは小児科の医師が手で陥頓を戻します。どうしても戻らない場合には、緊急手術が必要になります。

嵌頓を起こす前に手術を!

嵌頓を起こすかどうかは、誰にもわかりません。しかし、嵌頓では、緊急手術が必要になる事があります。緊急手術では、合併症を起こす可能性が高くなります。

手術を行っている様子の画像

緊急手術の可能性があるのなら、元気なときに予定手術で、より安全に手術を行なった方が良いと考えています。

鼠径ヘルニア根治術

図のような傷で手術をします。おなかのしわに沿った傷です。
傷は、溶ける糸を使い、皮膚の内側で縫い合わせるため、抜糸はありません。 
個人差がありますが、かなり目立たないものになります。 

男の子の手術

男の手術の場合の図

腸が出ている袋(ヘルニア嚢)は、精巣を栄養する血管精巣動静脈や、精子を送る管(輸精管)に沿って伸びています。

これらの血管や管を袋から離し、袋だけを根本で縛ります。切り離した袋については、切り開きます。

手術が終了したときの様子です。切り離した袋は、自然に小さくなっていきます。

女の子の手術

女の子の手術の場合の図

腸が出ている袋は、子宮を固定している子宮円靭帯に沿って伸びています。

袋の根本を靭帯と一緒に縛ります。大きな袋は切り開いておきます。

手術が終了したときの様子です。切り離した袋は、自然に小さくなっていきます。

卵巣や卵管が、袋の中に脱出している場合があります。この場合、それらを一緒に縛らないための工夫が必要になる事があります。

手術時間等

手術時間

30分くらい

手術室にいる時間

1~1時間30分

入院期間

日帰り又は、1泊

手術日

  • 月曜日
    小さい子
  • 金曜日
    大きい子だけ

術前検査

安全に全身麻酔が可能かを確認 します。
手術日決定時に採血とレントゲン検査を行ないます。

手術前の金曜日に外来受診(麻酔科)。 術後は、2〜3回外来通院の予定です。

合併症

次のような合併症が生じることがあります。

感染

清潔な手術室で感染には十分注意してはおりますが、稀に傷口が化膿することがあります。その場合、消毒・内服薬などが必要になります。

痛み

小児の場合、軽度で済むことがほとんどですが、場合によっては鎮痛剤を使用します。

 また、特に小さなお子さんの場合、病室へ帰った時に大騒ぎをすることがあります。これは、時間と共に落ち着いてきますので、心配ありません。

発熱

手術当日は38度前後までの発熱をする事がありますが、ほとんどの場合翌日には軽快します。

腫れ

手術をした場所が腫れることがあります。これは自然に軽快しますのでご安心ください。

出血

体の表面に近い部分の手術ですから、大量出血の可能性は、まずありません。

全身麻酔

子供の手術には、全身麻酔が必要です。これについては、麻酔科より説明があります。

再発

術後に10人に一人の割合で反対側のヘルニアが出現する事があります。

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病院の画像

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藤枝市立総合病院

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更新日:2020年05月07日