超音波科

科紹介

超音波検査とは、高周波の音波を用いて身体の内部を観察する非侵襲的(患者さんの体への負担が少ない)な医療検査のことです。超音波を発生させる機器を用いて、身体の内部の組織や臓器に向けて音波を送信し、反射した音波のパターンを解析し画像化します。この方法によって、臓器や組織の形状や大きさ、または異常な腫瘍や嚢胞の存在などを調べることができます。

また、放射線を使用しないため、X線写真(レントゲン写真)やCTなどの放射線を使用する他の画像診断と比較して、安全性が高く、特に妊婦や小児に適しています。また、検査時間が比較的短く、痛みなどを感じにくいため、多くの病院で一般的に行われている検査のひとつです。

対象臓器は、腹部、心臓、乳腺、甲状腺、表在、血管など、様々な領域にわたります。

超音波検査で何が解るの?

腹部超音波検査で何が解るの?

腹部領域では、肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓、膀胱、腸管などが検査の対象となります。
大きさ、形状、位置、内部の様子、腫瘍や嚢胞、炎症などがあるかどうかを調べることができます。
腹部超音波検査は、検査の種類によって、上記以外にもさまざまな臓器や組織を調べることができます。ただし、超音波検査は観察範囲が限られているため、より詳細な検査が必要な場合は、MRIやCTなどが必要になる場合があります。

胆石の画像

胆石

肝膿瘍の画像

肝膿瘍

虫垂炎の画像

虫垂炎

心臓超音波検査で何が解るの?

心臓の形状、機能、血流などを詳細に観察するための検査です。以下に心臓超音波検査で調べることができる内容を示します。

  1. 心臓の形状と大きさ
    心臓の四つの部屋の大きさや形状、肥大の有無などを評価することができます。
  2. 心臓の機能
    心臓の拍動と収縮、血液の流れ、左右の心臓の協調動作などを評価することができます。
  3. 弁の機能
    心臓弁の開閉状態、弁の形状、狭窄や逆流などの弁膜症を評価することができます。
  4. 心筋梗塞
    心筋梗塞を疑う場合に、梗塞部位や範囲、梗塞後の心臓の機能障害の程度を評価することができます。
  5. 心臓病の診断
    肥大型心筋症、拡張型心筋症、心内膜炎などの心臓病を評価することができます。
  6. 血流量の評価
    心臓の血流量や心拍出量などを評価することができます。

心臓超音波検査は、非侵襲的で安全な検査であり、心臓病の診断や治療方針の決定に役立つ重要な情報を提供することができます。

僧帽弁逆流症の画像

僧帽弁逆流症

拡張型心筋症の画像

拡張型心筋症

体表超音波検査で何が解るの?

乳腺や甲状腺、皮膚腫瘤などが検査の対象となり、大きさや内部の様子などを評価します。
乳腺超音波検査は、乳房内にしこり(腫瘤)があるかどうかを調べるために行われます。乳腺超音波検査はマンモグラフィー(X線)検査と比べて、特に乳腺の発達した若い女性で有効性が高いと言われています。腫瘤の有無、位置、その大きさ、形状などで、しこり(腫瘤)が “がん” である可能性などを評価することができます。

乳癌の画像

乳癌

血管超音波検査で何が解るの?

頚動脈や四肢血管(動脈、静脈)、透析のシャント静脈などが検査の対象になります。血管の内部の様子を詳しく調べるための検査で、主に動脈や静脈の狭窄や閉塞などを確認するために行われます。以下に、血管超音波検査で判定できる主な内容を示します。

  1. 血管の狭窄や閉塞の有無 
    血管内部の状態を詳しく観察することで、狭窄の程度や閉塞があるかどうかを判定することができます。
  2. 血管内部の異常な拡張や瘤の有無
    血管内部に異常な拡張や瘤があるかどうかを判定することができます。このような異常は、動脈瘤や静脈瘤などと呼ばれ、破裂すると危険な出血を引き起こすことがあるため、早期発見が重要です。
  3. 血管内部の血流速度や血流方向の評価
    血管内部の血流速度や方向を評価することができます。血管内の血流がスムーズに流れているかどうか、また逆流やうねりがあるかどうかを判定することができます。

血管超音波検査は、非侵襲的で安全な検査方法であり、血管疾患の早期発見や治療に役立っています。

浅大腿動脈閉塞の画像

ASO(浅大腿動脈閉塞)

地域医療との連携

検査業務の委託(オープン検査)

当科では、地域医療機関の支援と保有する機器及び検査技術のより一層の活用のために、地域医療機関からの各種超音波検査の受託(オープン検査)も行っています。

これはかかりつけ医からの依頼を、各診療科(消化器内科や循環器内科など)に通さず、超音波検査を行うものです。

※ご利用の際には、かかりつけ医から地域医療連携室(電話番号 054-646-1175 ファックス 054-646-1176)までお問い合わせください。

検査を受けられるときの諸注意

超音波検査は一般的に安全で、ほとんどの人が受けることができます。ただし、以下の点に注意が必要です。

  1. 検査前の準備
    検査前に医師や技師から指示された飲食制限や禁止事項に従って、適切に準備を行ってください。特に、腹部超音波検査の場合は、検査前数時間の絶食が必要な場合があります。
  2.  服装 
    検査を受ける部位によっては、服装に制限がある場合があります。例えば、心臓超音波検査の場合は胸部を露出する必要があるため、軽い服装を選ぶことが望ましいです。
  3. 検査中の姿勢 
    検査中は、指示された姿勢を保持する必要があります。特に、心臓超音波検査や腹部超音波検査の場合は、検査中に深呼吸や体位変換をすることが求められることがあります。
  4. 検査時間 
    超音波検査は、一般的に数分から20分程度で終了しますが、場合によっては時間がかかることもあります。特に詳細な検査を行う場合は、検査に時間がかかります。

以上のように、超音波検査を受ける前には、適切な準備が必要です。検査前に医師や技師に質問することで、不安を取り除くことができます。

スタッフ紹介

職種名
診療放射線技師 3名
臨床検査技師 7名
医療事務(委託) 2名

(2024年4月現在) 

認定資格

当科に関係がある認定資格に、「超音波医学会認定超音波検査士」があります。これは、超音波検査に関する知識や技能が一定水準以上あることを認定された専門技師のことを指します。超音波医学会は、超音波検査士のための資格認定制度を設けており、その認定を受けた者だけが「超音波医学会認定超音波検査士」と呼ばれます。

超音波検査士の資格は七つの領域に分かれていますが、いずれの領域でも、超音波検査の実施方法や画像解析、医学的知識や倫理観念など、多岐にわたる能力が求められます。また、資格の認定を受けるには、一定の実務経験を持ち、研修や試験に合格する必要があり、超音波検査における高度な技術力と専門知識を持つことで、医師や患者に対して高品質な超音波検査を提供し、医療現場で重要な役割を果たしています。

当院では、超音波検査士の取得者増に積極的に取り組んでいます。2022年度にも1名が「超音波検査士(体表臓器領域)」の資格認定を受けました。

また、当院には超音波検査士の上級に位置する「超音波指導検査士」の資格認定を受けた職員も1名在籍しています(腹部領域)。超音波指導検査士は、超音波検査士の育成や指導に携わることができ、より高度な超音波検査が提供されることを目的としています。これは全国でも21名しかいない資格となります(2022年7月現在)。

認定・専門技師
超音波指導検査士(腹部領域) 1名
超音波検査士(消化器領域) 8名
超音波検査士(体表臓器領域) 6名
超音波検査士(泌尿器領域) 3名
超音波検査士(循環器領域) 5名
超音波検査士(産婦人科領域) 2名
超音波検査士(血管領域) 2名
超音波検査士(健診領域) 1名
血管診療技師(CVT) 1名
医療情報技師 1名

(2024年4月現在) 

超音波検査士認定証
超音波指導検査士認定証

施設認定

当院は日本超音波医学会が認定する超音波専門医研修施設に指定されています。

超音波専門医制度研修施設指定証

使用機器

当院は、基本的に様々な領域に対応できる装置を使用しています。

主な使用機器
 Canon  Aplio  i700 1台
 Aplio  i600 1台
 VERIFIA 1台
 Aplio   400 4台
 Xario   200 1台
 FUJIFILM  ARIETTA  850 1台
 ARIETTA    60 1台
 GE  Venue GO 1台
 LOGIQ-e 1台
機器の画像

各超音波検査件数

検査件数
  平成29年度 平成30年度 令和元年度 令和2年度 令和3年度
腹部 14,464 14,498 13,228 13,351 12,968
心臓 8,898 8,855 8,046 7,742 7,861
経食心 8 14 5 2 2
乳腺 5,343 5,515 5,220 4,635 4,584
甲状腺 1,316 1,524 1,407 1,321 1,319
体表 2,083 2,092 1,889 1,705 1,938
血管 3,699 3,926 3,693 3,277 3,468
穿刺・超音波造影 994 1,032 883 690 914
結石破砕 37 29 39 15 25
妊婦健診 1,287 1,340 1,118 987 969
その他 121 153 145 84 64
合計 38,250 38,978 35,673 33,809 34,112
各超音波検査件数のグラフ

学術発表等

当科では、学会発表等も積極的に行っています。

令和5年度実績

投稿

  • 熟練ソノグラファーの思考アルゴリズムとテクニック・腹部領域(超音波検査技術 Vol.48 No.2) 
  • 超音波検査の「描出不良」解決テクニック1.1)肝臓(Medical Technology Vol.50 No.10)
  • 技術講座 ビギナー編 「感染性腸炎の超音波検査」(検査と技術 Vol.52 No.4)

講演

  • 消化管の描出、診方(第76回東海エコーカンファレンス)
  • LOGIQ E10xの使用経験~消化管超音波検査におけるリニアプローブでの実際~(Meet The Expert Teams in 静岡)
  • ハンズオンセミナー講師(消化管エコー研究会ハンズオンセミナー2023)
  • ひとりでできるもん! DVT、静脈瘤エコー(第9回東海血管検査研究会・第2回中部CVTの会)

学会、勉強会発表

  • 拡張した管腔像伴う膵腫瘤の一例(第81回超音波部会研修会)
  • 腹痛にて救急外来を受診した心窩部腫瘤の一例(消化管エコー研究会2023)

令和4年度実績

講演

  • 虫垂の描出法、診方(研修医症例発表会)
  • ガイドラインを踏まえた消化管の描出と評価ポイント・虫垂炎(第143回医用超音波講義研修会)
  • 熟練ソノグラファーの思考アルゴリズムとテクニック・腹部領域(日本超音波検査学会中部第37回地方研修会)

学会、勉強会発表

  • 潰瘍性大腸炎の経過中に腫瘍性病変を合併した一例(日本超音波医学会第95回学術集会)
  • 乳癌との鑑別に苦慮した男性乳腺線維症の1例(第47回日本超音波検査学会学術集会)

令和3年度実績

講演

  • 絶対NG! 帰してはいけない患者とその対応・一般的な急性腹症(第46回日本超音波検査学会学術集会)
  • 深部静脈血栓症の診方 ”超音波による深部静脈血栓症・下肢静脈瘤の標準的評価法” を踏まえて(研修医症例発表会)

学会、勉強会発表

  • 心停止蘇生後に心筋石灰化が出現した若年肥大型心筋症の一例(第46回日本超音波検査学会学術集会)
  • 診断に苦慮したparagangliomaの一例(日本超音波医学会第42回中部地方学術集会)
  • 呼吸苦で三次救急搬送された一例 ~果たしてその原因は?~(3病院心エコー勉強会)
  • 心停止蘇生後に心筋石灰化が出現した若年肥大型心筋症の一例(第46回日本超音波検査学会学術集会)

令和2年度実績

論文

  • これで万全!緊急を要するエコー所見 ~腸管出血性大腸炎~(雑誌「臨床検査」2020年4月・増刊号(第64巻4号))

講演

  • 消化管疾患における超音波と内視鏡の役割(第45回日本超音波検査学会学術集会)

学会、勉強会発表

  • 魚骨穿孔に続発した回盲部放線菌症の一例(消化管エコーセミナー2020)

令和元年度実績

講演

  • 他のモダリティーを含めた質的診断と病理との対比 ~消化管腫瘍~(第133回医用超音波講義講習会)
  • 救急エコーのABC 歴史から有効性と限界まで(第161回研修医症例発表会)
  • 心エコーとリハビリテーション(聖稜リハビリテーション病院心臓超音波検査勉強会)
  • 腎臓・腹部大動脈の解剖とチェックポイント(第88回中部超音波検査フォーラム)
  • 腹部エコー(Meet the Expert 静岡)
  • 超音波検査の話「何で?どうして?」(藤枝市立総合病院市民公開講座)
  • 腹部超音波検査 良き腹部ソノグラファーをめざして(第19回日本消化器がん検診学会東海北陸地方会)

学会、勉強会発表

  • 心臓骨肉腫の一例 (第44回日本超音波検査学会学術集会)
  • 当院での超音波研修について(日本超音波医学会第40回中部地方会学術集会)

平成30年度実績

論文

  • 腹痛を契機に確認されたSMA症候群(静岡ジャーナル Vol.28 No.2 2018)

講演

  • エコーハンズオンセミナー「下肢静脈エコーの実践」(静脈血栓塞栓症の予防と治療を考える)
  • Point of care USのすすめ 動体視力を付けよう(第161回研修医症例発表会)
  • 「我々はここを見ている、心の像」エコー(第16回マルチモダリティシンポジウム Versus)
  • 超音波技術の指導と指導超音波検査士受験対策「私たちの技術を伝えるために」(第20回三重県超音波研究会)
  • 「救急超音波検査の走査からレポートまでの総解説」〜知らなきゃ損するPoint-of-care USのポイント〜(第185回定例会東京超音波研究会)

学会、勉強会発表

  • 若年性高血圧の一例(3病院心エコー勉強会)
  • 心臓骨肉腫の一例(3病院心エコー勉強会)
  • 腹痛を契機に確認されたSMA症候群(第74回静岡県放射線技師会超音波部会研究会)

平成29年度実績

論文

  • 体に優しい超音波検査(自治会広報誌「ふれあいだより」)

講演

  • 腹部大動脈・その他の超音波検査(日本診療放射線技師 基礎技術講習「超音波検査」)
  • 肝臓の超音波解剖について(第9回静岡県血管撮影研究会)
  • Point of care US(第149回研修医症例発表会)
  • 腹部大動脈・消化管の超音波検査(日本診療放射線技師会 第1回超音波実技講習会「腹部領域」)
  • 腹部大動脈・消化管の超音波検査(日本診療放射線技師会 第3回超音波実技講習会「腹部領域」)

学会、勉強会発表

  • 妊婦の心不全の一例(3病院心エコー勉強会)
  • 脈の結滞を主訴とし右心負荷を認めた1例(3病院心エコー勉強会)
  • 診断に苦慮した硬化型肝細胞癌の一例(第42回日本超音波検査学会学術集会)
  • 超音波検査によるEVLA後のSFJ-SEV分岐部間の距離の検討(第58回日本脈管学会)

連絡先

10番ブロック 内線5400

この記事に関するお問い合わせ先
超音波科

住所:静岡県藤枝市駿河台4丁目1番11号
電話番号:054-646-1111(代表) ファクス:054-646-1122
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更新日:2024年04月01日