肺がんの外科治療 -肺がん検診と進化する外科治療

執筆者 呼吸器外科 科部長 江間 俊哉(えま としなり)

肺がんは死亡数第1位です

近年、肺がんと診断される方の数は年間12万人以上、そして年間約7万5千人の方が肺がんでお亡くなりになっています1)。肺がんの死亡数は男性で1位、女性で2位、男女合わせて1位と部位別がん死亡数のトップとなっています1)

肺がんは極めて悪性度の高いがんと言えます。私たち呼吸器外科医は肺がんを外科治療で根治することを最大の使命と考えています。手術を施行した患者さんの予後は比較的良好で術後補助療法などの集学的治療によりさらに治療成績は向上しつつあります。しかし残念ながら手術が可能な比較的早期の肺がんはほとんどが無症状であるため発見に至らないことが多く、肺がんと診断された中で手術療法を受けることのできる患者さんの数は限られています。

早期肺がんは無症状であることがほとんどです

早期の肺がんの場合は症状が現れることはほとんどないため、自覚症状での発見は困難です。進行した肺がんでも発見された時点で無症状であることがあります。治療効果の高い早期のうちに肺がんを発見することが重要であると考えていますが、症状がないため通常ではなかなか見つけられません。

肺がん検診 (一時検診) はスクリーニングとして有用です

それではどのような方法で早期の肺がんを見つければいいのでしょうか。無症状で病院に受診することはなかなかありませんので、スクリーニング検査という点での肺がん検診が有用と思われます。肺がん検診には行政が介入する対策型検診(住民健診)と、人間ドックに代表される個人に対する任意型検診があります。対策型検診は集団全体の死亡率減少を目的として実施するものを指し、公共的な予防対策として行われます2)

わが国では1990年代に実施された4つの症例対象研究において、胸部X線撮影による検診の受診によって肺癌の死亡リスクを30~60%減少させることが示されました。(表1)3,4)

現在、志太榛原地区の肺がん検診は、40歳以上での年1回の胸部X線撮影と、質問の結果、喫煙指数(1日本数かける年数)600以上と判明した重喫煙者への喀痰検査細胞診が一次検診として行われています5)

二次精密検診として胸部CTが有用です

当院では、対策型検診、任意型検診を問わず一次検診の要精密検査となった方を対象とし胸部CT検査を中心とした二次精密検診を実施しております。肺がんと診断された場合には、呼吸器内科、呼吸器外科、放射線治療科などと協力して治療を行っています。もちろん他病院へのセカンドオピニオンもご相談ください。

低線量胸部CTによる肺がん検診(CT検診)

低線量CT検診は1993年にわが国で始められました。当初から高い早期発見率が報告され、現在任意検診によるCT検診が普及しつつあります。CT検診による肺がん死亡率の減少効果について現時点では判断できていませんが、欧米ではCT検診での肺がん死亡の減少を示したデータもあります。今後CT検診の推奨レベルが再検討させるかもしれません3,6)

肺がんの低侵襲(ていしんしゅう)手術

早期肺がんの場合には、根治手術が治療の第一選択となります。当院では現在低侵襲手術に力を入れています。胸腔鏡というカメラを用いた傷の小さな手術のほか、手術支援ロボット(ダビンチ)を用いた手術を開始しております(図1)。すべての患者様が低侵襲手術の適応とはなりませんが、可能な限り負担の少なく効果の高い手術を目指しております。

ダビンチ

【図1】当院で導入しているダビンチXi

表1
地域 症例 対象 喫煙調整オッズ比
宮城県 328 1866 0.54(0.41-0.73)
新潟県 176 827 0.401(0.272‐0.591)
岡山県 412 3506 0.59(0.46-1.05)
群馬県 121 536 0.68(0.44-1.05)


1)公益財団法人 がん研究振興財団 がんの統計 2021
2)国立がん研究センター がん対策研究所 ホームページ
3)吉村明修 肺がん検診の現状 臨床画像 34(12):1246-1432,2018
4)佐川元保ほか 肺がん検診の有用性評価:厚生省藤村藩での4つの症例対象研究 肺癌41(6):637-642,2001
5)令和2年度 志太医師会 藤枝市 特定健康診査およびがん検診マニュアル
6)原田眞雄 肺がん検診の基本的な考え方と最近の動向 肺癌 59:1067-1069, 2019
 

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更新日:2023年03月24日