今、前立腺がんが増えている!~手術支援ロボット「ダビンチ」も活躍しています~

泌尿器科伊藤寿樹医師

作成者 : 泌尿器科 伊藤寿樹医師

こちらは病院広報誌「おもいやり」2022新緑号No.89 市民公開講座出張版のコーナーに掲載したものです。

 

はじめに

私がまだ医師として駆け出し頃の2003年には、明仁上皇陛下のご病気が前立腺がんとの報道が流れたことをうけて、前立腺がんを心配する患者さんが外来に殺到し、前立腺がんの国民への認知度が一気に高まりました。その後のPSA検診の普及とともに前立腺がんの患者さんは増え続け、ついに2017年の全国がん登録では前立腺がんが男性がんの第1位になりました。最近では、タレントの西郷輝彦さんが前立腺がんで亡くなったとのニュースは記憶に新しいことだと思います。

日本人男性におけるがんの罹患率の推移

前立腺がんは早期発見が大事

診断のきっかけとなるのは前立腺特異抗原(PSA)という腫瘍マーカーです。泌尿器科以外でもドックや集団検診で測定してもらえます。自覚症状のない人も受ける機会があるわけですから、早期に見つかる可能性が高くなります。早期がんは治癒が可能です。ただし前立腺がんの場合は転移していてもホルモン療法がよく効きますので長期間にわたって症状の発現を抑えたり軽減したりすることが可能です。結果を恐れずに検診を受けましょう。

前立腺がんの治療には何がある?

当院のダビンチ

もし前立腺内にとどまるがん(転移のない限局がん)であれば根治を目指すことができます。それには全摘手術と放射線照射があります。もし、75歳前後であれば、もっとも根治性が高い全摘手術がお勧めです。しかし、この手術には「尿失禁」や「性機能低下」の可能性が昔から指摘されています。近年は、ダビンチという手術ロボットが主流になり、当院でも令和3年度より実施しています。この手術ロボットは開腹手術よりも格段に細やかな手術操作が可能であるため、「尿失禁」や「性機能」への影響を軽減できる最新鋭ロボットです。

前立腺がんの大まかな治療方針


一方、手術を希望されない方や身体的な理由により手術が受けられない方には放射線照射が選択されます。当院では、従来の放射線照射に比べ副作用の少ない強度変調放射線治療(IMRT)が可能です。

残念ながら転移をしている前立腺がんであれば、必然的にホルモン療法で全身のがんを抑え込むことになります。それでも近年は薬剤の普及が目覚ましく、治療成績も格段に向上しています。転移がんと診断されたあとも元気に日常生活を長く送っている患者さんも少なくありません。

前立腺がんを摘出する前と後

終わりに

前立腺がんは正しい治療を行えば根治できる可能性が非常に高い病気です。50歳を過ぎたらPSA検査を受けましょう。
 

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更新日:2022年10月20日