泌尿器科
はじめに
近年の静岡県内の泌尿器科医師の減少により、当院でも泌尿器科の診療制限がしばらく続いておりましたが、2022年度より、常勤医4名と近隣の非常勤医師による応援体制で通常診療を再開する運びとなりました。地域医療に貢献できるように日々邁進する所存ですのでよろしくお願い申し上げます。
当科の診療指針
泌尿器科は腎尿路、副腎などの後腹膜臓器や男性生殖器の疾患に対する治療を行う分野です。高齢化社会に伴い、泌尿器科の病気で悩まれる患者さんがますます増えています。具体的には、「泌尿器・後腹膜のがん」、「尿路感染症」、「排尿障害」、「尿路結石」、「腎不全」「生殖器疾患」などを扱っており、個々の患者さんの病態に合わせ、薬物療法から手術療法まで最高水準の治療を患者さんに寄り添って提供していきたいと思っています。
私たちは、以下のことを日々心がけて診療にあたっていきたいと思います。
- 浜松医科大学との連携により、最近のエビデンスやガイドラインに準じた医療を実践します。また、私たち自身も積極的に研究会や学会に参加して知識や技術の向上に努めます。
- クリニカルパスを用いて患者さんとの情報の共有をはかり、丁寧でわかりやすい説明を心掛けます。
なお、当院では地域がん診療連携拠点病院としての役割を全うするために、次の項目については診療を行っておりません
- 不妊治療
- 次の自費診療に該当するもの:パイプカット(精管結紮術)、ED(勃起不全)治療、仮性包茎治療
- 小児疾患:小児の停留精巣および包茎治療は、手術適応の有無に関しては診察可能ですが、手術は他院への紹介となります。
外来担当医表
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | ||||||
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午前 | 午後 | 午前 | 午後 | 午前 | 午後 | 午前 | 午後 | 午前 | 午後 | |
初診/再診 | 伊藤 | 大日方 | 伊藤 | - | - | 伊藤 | ||||
初診/再診 | 渡邉 | - | - | 田仲 | - | - | 渡邉 | |||
再診のみ | 田仲 | - | 交替制 | - | - | - | 医大 (11時~) |
- | - | |
手術 | (臨時枠) | 全身麻酔/ 自科麻酔 |
自科麻酔 | 全身麻酔/ 自科麻酔 |
(臨時枠) |
- 診療受付時間は午前8時~11時です。
- 初診の方は、紹介状をご用意のうえ予約をお取りください。
- 外来以外の医師は手術・検査、及び病棟業務等を行っています。
スタッフ紹介
職名 | 氏名 | 卒業年 | 学会専門医資格等 |
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科部長 | 伊藤 寿樹 | 平成13年卒 | 日本泌尿器科学会認定専門医・指導医 日本透析医学会認定透析専門医 日本臨床腎移植学会認定腎移植認定医 日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 腹腔鏡技術認定 日本内視鏡外科学会 技術認定医(泌尿器腹腔鏡) ロボット(da Vinci)支援手術プロクター認定医 Physicians Training requirements on Rezum System修了 Space OARTM System Appliers Training修了 がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了 身体障害者福祉法第15条指定医師(じん臓機能障害・ぼうこう機能障害) 日本泌尿器内視鏡学会 代議員 |
医長 | 渡邉 信哉 | 平成29年卒 | 日本泌尿器科学会認定専門医 ロボット(da Vinci)支援手術プロクター認定医 Physicians Training requirements on Rezum System修了 Space OARTM System Appliers Training修了 がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了 |
医員 | 田仲 広基 | 平成29年卒 | ロボット(da Vinci)支援手術認定医 Space OARTM System Appliers Training修了 |
医員 | 水谷 周平 | 令和3年卒 | ロボット(da Vinci)支援手術認定医 がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了 |
内田浩介(非常勤) | 浜松医科大学泌尿器科 医員 Certificate of da Vinci System Training as a First Assistant Space OARTM System Appliers Training修了 がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会 |
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天野 裕之 (非常勤) |
平成6年卒 | 医療法人社団天成会 天野医院 院長 日本泌尿器科学会認定専門医・指導医 日本透析医学会認定専門医・指導医 日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 腹腔鏡技術認定医 日本内視鏡外科学会 技術認定医(泌尿器腹腔鏡) 日本透析アクセス医学会 VA血管内治療認定医 |
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大日方 大亮 (非常勤) |
日本大学医学部附属板橋病院 泌尿器科 准教授 日本泌尿器科学会認定専門医・指導医 日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 腹腔鏡技術認定医 日本内視鏡外科学会 技術認定医(泌尿器腹腔鏡) ロボット(da Vinci)支援手術認定医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本内分泌学会認定内分泌代謝科(泌尿器科)専門医 Physicians Training requirements on Rezum System修了 Space OARTM System Appliers Training修了 |
科の目標
主な対象疾患
前立腺がん
当科では健診センターや近隣の医療機関と連携して、前立腺がんの早期発見に努めています。前立腺生検は、当日あるいは前日に入院していただき、鎮静剤あるいは腰椎麻酔を使用して行っています。原則としてあらかじめ施行したMRIの所見をもとにターゲット生検を行い、安全性と診断精度の向上を求めています。もし前立腺内にとどまるがん(転移のない限局癌)であれば、全摘手術か放射線照射で根治をはかります。
当院ではロボット支援手術システム「da Vinci Xi」を導入し、令和3年度より実施しており、放射線治療に関しては強度変調放射線治療(IMRT)を放射線治療科と連携して行っています。密封小線源療法等を希望されるかたにはご希望の施設をご紹介します。進行がんや手術適応のない患者さんに対しても、最新の薬物療法を積極的に導入して患者さんの年齢や体力、ライフスタイルに合わせた治療をいっしょに考えていきたいと思います。
当科で行っている治療
腎臓がん
腎がんの治療の基本は摘出手術です。比較的早期の腎がんに対しては、腹腔鏡下腎摘除を施行いたします。近年では小さな腎がんに対しては腎機能の温存を目的とした腎部分切除術が推奨されています。最近保険適応となったロボット支援手術も含めて患者さんにあった最適な術式を検討します。また、進行がんや転移をきたした場合に対しては、リスク分類や組織型を考慮して分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤を用いた標準治療を行っています。
当科で行っている治療
膀胱がん・腎盂がん・尿管がん
早期の膀胱がんに対しては内視鏡的切除術で治癒切除を目指します。2023年9月より、光学力診断(Photodynamic diagnosis; PDD)を導入し、診断精度を高めて、再発率を下げる努力をしています。また、転移のない浸潤性膀胱がんには、標準治療である膀胱全摘術を推奨しています。しかし、尿路変更(尿路ストマ)による日常生活への影響やボディイメージの変化が手術決定の妨げとなることが多いため、患者さんの希望を十分に考慮して決定します。
腎盂・尿管がんは、限局性の場合は腎尿管全摘除術が基本です。開放手術・腹腔鏡手術・ロボット支援手術の中で、患者さんの病状や希望に応じて最適な術式を提案します。尿路上皮がんは比較的再発や転移を起こしやすく、従来の抗がん剤や次世代のがん治療薬である免疫チェックポイント阻害剤を積極的に導入し、治療成績の向上に努めています。
当科で行っている治療
尿路結石
尿路結石の治療方針は多岐にわたります。保存的治療(自然排石をめざす)が可能なものもありますが、多くは砕石手術が必要です。結石の状況によってさまざまな治療戦略があり、特に重症化が懸念される場合は緊急処置が必要な場合もあります。結石治療には、簡便に施行できる体外衝撃波(ESWL)もありますが、確実な砕石にはホルミウムレーザーを用いた内視鏡手術が推奨されます。当科では細径腎盂尿管ファイバーを用いて、あらゆる結石治療に対応可能です。
当科で行っている治療
前立腺肥大症
前立腺がん検診の普及とともに前立腺肥大症の増加と診断される患者さんも急増しています。当科では、従来の切除手術ではなく、根治性と効率面で優れている核出手術(HoLEP、TUEB)を導入しています。特にホルミウムレーザーを用いたHoLEPは術後早期から確実な効果が期待できるため、前立腺肥大症に対する第一選択と位置付けています。手術実績の豊富な医師が担当しますので、患者さんにも安心して手術を受けてもらえると考えています。また、2022年9月に保険適応となった低侵襲手術(経尿道的水蒸気治療:Rezum™)の導入により、ご高齢や基礎疾患のために周術期リスクの高い患者さんにも治療の幅が広がりました。
当科で行っている治療
腎後性腎不全・重症尿路感染症
尿路結石や腫瘍による尿路の閉塞が生じると、しばしば敗血症や腎不全を起こして命に関わる状態に重篤化します。この場合、緊急処置として尿管ステントもしくは腎瘻カテーテルを留置して尿管の閉塞を解除することが必要となります。
症例に応じて他科と連携して、エンドトキシン吸着や血液透析を積極的に併用し、病状の早期回復を図ります。
当科で行っている治療
副腎腫瘍
副腎の腫瘍は大別して2種類あります。腫瘍はあるけれども過剰にホルモンを分泌しない非機能性腫瘍と、腫瘍から前述のホルモンを分泌し過ぎる機能性腫瘍です。機能性腫瘍の場合、治療の原則は腹腔鏡手術による腫瘍摘出です。また、ホルモンを産生しない腫瘍の場合でも、増大傾向などで悪性が疑われる場合は摘出による病理組織診断が必要です。副腎はおなかの奥深くにある小さな臓器のため、腹腔鏡下手術が有用であり、2000年初頭より標準手術として定着しています。
当科で行っている治療
排尿障害
排尿障害の原因としては、前立腺肥大症、過活動膀胱、間質性膀胱炎など様々なものがあります。過活動膀胱に対してはボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法、間質性膀胱炎に対しては、診断と治療を目的として膀胱水圧拡張術という手術が適応になります。また、糖尿病による膀胱機能障害、外傷による脊髄神経障害、脳血管疾患による膀胱機能障害なども含まれますので、必要に応じて膀胱機能検査(ウロダイナミックス)を施行して、治療方針を立案します。排尿に関する諸問題は一生目を背けることができないものであり、患者さんの病態にあわせて最適な治療内容を提案していきたいと思っています。
当科で行っている治療
※ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は未実施
さらに知りたい人はこちら
診療実績
治療の内訳 | 令和4年 | 令和5年 | 令和6年 |
---|---|---|---|
副腎摘除術(鏡視下) | 0 | 3 | 2 |
単純腎摘出術・良性(開腹) | 0 | 1 | 2 |
腎摘除術(開腹) | 2 | 1 | 0 |
腎摘除術(鏡視下) | 3 | 5 | 6 |
腎尿管全摘除術(開腹) | 0 | 1 | 0 |
腎尿管全摘除術(鏡視下) | 2 | 4 | 5 |
ロボット支援腎(尿管)悪性腫瘍手術 | 0 | 0 | 5 |
ロボット支援腎部分切除術 | 0 | 0 | 1 |
ロボット支援根治的前立腺全摘除術 | 23 | 31 | 30 |
膀胱全摘除術(開腹)+回腸導管造設術 | 0 | 1 | 4 |
膀胱全摘除術(開腹)+尿管皮膚廔造設術 | 0 | 0 | 1 |
経尿道的尿管砕石術(TUL) | 46 | 66 | 87 |
経皮的腎・尿管砕石術(PNL) | 0 | 1 | 3 |
経皮的腎瘻造設術(PNS) | 4 | 8 | 8 |
体外衝撃波砕石術(ESWL) | 0 | 15 | 12 |
経尿道的膀胱砕石術 | 13 | 18 | 16 |
尿道結石摘出術 | 1 | 0 | 0 |
経尿道的尿管ステント留置・抜去 | 196 | 246 | 285 |
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT) | 45 | 86 | 91 |
経尿道的前立腺切除術(TUR-P) | 4 | 8 | 11 |
経尿道的前立腺喀出術(TUEB) | 8 | 17 | 1 |
経尿道的前立腺喀出術(HoLEP) | 17 | 27 | 44 |
経尿道的水蒸気治療(Rezum™) | 0 | 8 | 11 |
経尿道的電気凝固術 | 3 | 7 | 12 |
膀胱瘻造設術 | 2 | 5 | 3 |
膀胱水圧拡張術 | 2 | 1 | 4 |
陰嚢水腫根治術 | 4 | 3 | 8 |
精巣摘出術(前立腺癌) | 4 | 4 | 1 |
高位精巣摘出術(精巣腫瘍) | 1 | 2 | 2 |
精巣固定術(精巣捻転に対する) | 2 | 3 | 2 |
環状切除術(真性包茎) | 4 | 4 | 8 |
尖圭コンジローム切除術 | 1 | 0 | 0 |
前立腺生検 | 136 | 95 | 138 |
ブラッドアクセス造設術 | 1 | 2 | 0 |
CAPD用カテーテル設置 | 0 | 0 | 0 |
前立腺癌根治的放射線治療(IMRT) | 22 | 42 | 38 |
経会陰的放射線治療用材料局所注入(SpaceOAR™) | 0 | 24 | 25 |
計 | 524 | 697 | 865 |
主たる学術活動
学会発表
当科の臨床研究へのご協力のお願い
当科では浜松医科大学泌尿器科学教室の共同研究機関として、今後の医療の発展に役立てるため、様々な臨床研究を実施しています。
患者さんの診療に直接影響しないように、また患者さんのプライバシーに充分配慮した上で、主に診療録のデータを集積・解析して研究を行っています。このような診療情報等の過去の情報のみを用いた研究や、手術検体試料を用いるような研究については、文部科学省と厚生労働省が定めた「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に基づき、対象となる患者さんから直接同意を得ない場合があります。これらのデータを学会発表や論文の発表に貴重なデータとして利用させていただくことがございますので、ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
なお、当科で行っている臨床研究の一覧については、当院の臨床研究管理室のページをご覧ください。
受付時間
平日 午前8時~午前11時
連絡先
7番ブロック 内線:2520
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更新日:2025年02月03日