ロボット支援手術(ダビンチ)

新世代の腹腔鏡手術=ロボット支援手術「ダビンチ」

ロボット支援手術の大きなメリットは、身体的な負担が少ない腹腔鏡下手術の特長を生かしながら、人の手による手術の問題点をロボットの機能で克服できるという点にあります。2009年に初めての手術支援ロボットとして日本国内に導入されて以降、第1世代から第4世代までの450台以上が導入されています(2021年12月現在)。

2012年の前立腺がんに始まり、2016年に腎臓がん、2018年に肺がん・胃がん、2020年には膵臓がん・食道がんなど、現在も急速に適応疾患が増えておりますが、現状では「泌尿器科」での利用と実績が最も多くあります。その理由は、泌尿器科は骨盤や腹部の奥(後腹膜腔)にある腎臓や膀胱、前立腺など狭くて深い術野での手術が多いため、従来の開腹手術よりも格段に細やかな手術操作が可能となるロボットのアドバンテージを強く生かすことができることも関係しています。

泌尿器科領域のロボット支援手術
疾患名 術式 保険収載
前立腺がん ロボット支援前立腺全摘除術 2012年
腎がん ロボット支援腎部分切除術 2016年
ロボット支援腎摘除術 2022年
腎盂・尿管がん ロボット支援腎尿管全摘除術 2022年
膀胱がん ロボット支援膀胱全摘除術 2018年
副腎腫瘍(副腎髄質腫瘍含む) ロボット支援副腎摘除術 2022年
腎盂尿管移行部狭窄症 ロボット支援腎盂形成術 2020年
骨盤臓器脱 ロボット支援仙骨膣固定術 2020年

当科では、2021年11月から手術支援ロボット「ダビンチ」による前立腺全摘除術を開始しました。手術を受ける患者さんの悩みの種である術後の尿失禁の可能性に対しても、丁寧な説明と治療成績の向上に力を入れています。

前立腺全摘除術の術式の変遷

ロボット支援手術における患者さんのメリット・デメリット

ロボット支援手術は、開腹手術と比較して「傷口が小さい」「痛みが少ない」「出血量が少ない」「回復が早い」ことがメリットです。また、拡大視野での3次元立体画を用いており、狭い範囲でも人間の手以上の複雑かつ繊細な手術が可能です。そのため、以下のメリットがあります。

  1. 傷が小さくて、入院期間が短い
    一般的には入院してから10日程度で退院が可能になります。
  2. よりよい神経温存手術が可能
    必要な神経や筋肉の見極めや温存が可能となり、「尿失禁」や「性機能」への影響を軽減できます。
  3. 正確な切除
    従来の開腹手術に比べて盲目的な操作が皆無なため、切除断端の見極めが可能となり、断端陽性率を下げることが報告されています。
  4. 高い安全性と確実性
    骨盤内手術の重大な合併症である大血管損傷や直腸損傷などのトラブルは稀です。

一方で、患者さんに知っていただきたいデメリットもあります。

  1. 頭を25度下げた姿勢で行うため、原則として、緑内障や重度の心臓疾患、呼吸器疾患のある方は、この手術はお受けできません。
  2. 過去に腹部の手術を受けている場合にも、ロボット手術を行えないと判断することがあります。
  3. 大血管などの大きな出血に対しては、内視鏡操作では対応できないこともあり、開腹手術に変更する場合もあります。

患者さんに知っていただきたいこと

いくら低侵襲手術とは言え、ロボット支援手術の適応を見誤ると重大な合併症にもつながりかねません。したがって、術前に眼科で眼圧のチェックをしてもらったり、循環器内科や呼吸器内科を受診してもらったりして、耐術能(医学的に手術可能かどうか)の評価を行わせていただく場合があります。ロボット手術を受けることが医学的見地から可能かどうかについては、主治医とよく相談して頂く必要があります。
 

この記事に関するお問い合わせ先
泌尿器科

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更新日:2022年05月31日