子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術(UAE)
子宮筋腫とは
子宮筋腫とは、子宮にできるコブのようなもので、良性の腫瘍です。
ほとんどは経過観察可能で、生命に関わることはありませんが、発生部位や大きさによっては、過多月経(出血量の増加)や過長月経(月経期間の延長)、貧血、強い月経痛、下腹部膨満感、頻尿、便秘などの自覚症状を生じる場合があります。
日常生活に支障を来たす場合は、症状を軽くするための治療が必要になることがあります。
子宮筋腫に対する治療法
治療法には、薬物療法、外科的手術(子宮全摘術、子宮筋腫核出術など)、子宮動脈塞栓術(Uterine artery embolization = UAE)などがあります。
以前は、薬物療法が効かない場合は、外科的手術が治療の中心でしたが、2014年から子宮動脈塞栓術が保険適応となり、新たな選択肢として注目されています。
当院では、子宮動脈塞栓術の適応判断から入院・術後管理までを、産婦人科とIVR科が協力して行っています。
各治療法にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、個々の患者さんに応じて最も適切な治療法を選択する必要があります。
子宮動脈塞栓術とは
子宮動脈塞栓術は、開腹を必要としない低侵襲な治療です。カテーテルという細い管を用いて、子宮筋腫に栄養を供給する動脈の血流を、塞栓物で人工的に詰めることで、筋腫の縮小と症状の改善を図ります。
比較的新しい方法ですが、安全で有効な治療法として確立されています。
ほかの治療法と同様に保険診療で行うことが出来ます。
手術の方法
- 足の付け根に局所麻酔を行い、直径約1.4ミリメートルのカテーテルを動脈内へ挿入します。
- 造影剤という薬を注入して骨盤動脈造影を行い、マイクロカテーテル(径約1ミリメートル)を子宮動脈へ挿入します。
- 子宮筋腫に栄養を送る動脈へ、塞栓物質を注入します。
当院では、手術時間の短縮および被ばく量の低減のため、基本的に両側からカテーテルを挿入し、左右同時に治療を行っています。
当院では、IVR専門医が手術を行っています。
子宮動脈塞栓術のメリット
- 身体への負担が小さい。(傷が約2ミリメートルと小さい)
- 社会復帰が早い。(入院期間が短く、日常生活に早く復帰できる)
- 子宮を温存できる。
- 出血量が少なく、輸血が必要となることがほぼない。
- 健康保険が使える。
子宮動脈塞栓術のデメリット
- 再治療が必要な場合がある。
- 組織検査を行えないので、悪性腫瘍を完全には否定できない。
治療成績
95%以上の症例で塞栓術が成功します。
子宮筋腫の縮小率は50~60%、子宮体積の縮小率は40~50%と報告されています。
子宮動脈塞栓術1年後の症状改善率は90%以上、5年以上の経過観察を行った研究では、症状改善率は70~90%、再発率は10~30%と報告されています。
被ばくについて
これまでの研究で、1 回の子宮動脈塞栓術で局所の皮膚障害や不妊が発生する可能性は非常に少ないと報告されています。当院でも、放射線被ばくが原因と考えられる障害の報告はありません。
私たちは放射線を扱う専門医として、無駄な被ばくを避けることを常に考えています。出来る限り被ばく量を減らす対策を行っていますので、安心して治療を受けてください。
子宮筋腫に対してUAEを行った症例
症例1

症例2

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更新日:2022年05月12日