内視鏡治療が困難だった場合のBRTO

IVRの部屋

胃静脈瘤、肝性脳症に対するBRTO

内視鏡治療が困難だった胃静脈瘤に対してBRTOを施行した症例

C型肝硬変の患者さんです。過去に胃静脈瘤から出血して、吐血をされたことがあります。内視鏡的に治療が難しい胃静脈瘤でしたので、今回BRTOを施行しました。

治療前の門脈造影

最初に行った門脈造影です。肝臓が悪くなると本来の門脈の流れが滞って、異常な別の経路(側副路)が発達します。側副路はからだのあちらこちらで発達しますが、特に胃の静脈が太くなったものが胃静脈瘤です。これが破裂すると大量の出血を起こし、生命の危機に陥ることもあります。食道静脈瘤と違って胃静脈瘤は内視鏡的に治療しにくいことがありますので、そのような場合はBRTOなどのカテーテル治療を行います。

治療前の門脈造影写真

門脈の血管造影の写真です。写真の左上に肝臓があります。肝臓が悪くなると本来の門脈の流れ(緑矢印)が滞って、異常な別の経路(赤矢印)が発達します。これがどんどん太くなって、胃の静脈がるいるいと発達したものが胃静脈瘤(白く囲った部分)です。

通常のBRTO

足の付け根の静脈(大腿静脈)から風船のついた特殊なカテーテルを血管内に挿入します。IVRの技術で、先端の風船を異常血管の出口まで進めて風船を膨らませると、異常血管の流れを一時的にせき止めることができます。しかしこの症例は発達した異常血管がちょうど迷路のように分岐していて、胃静脈瘤の流れをうまくせき止めることが出来ませんでした

風船が1つ付いたカテーテルで治療しているときの画像写真

通常我々が用いている、風船が1つ付いたカテーテルで治療しているときの絵です。丸く囲った部分が、見にくいのですが風船の位置です。血液の流れをせき止めた状態で造影剤を注入しましたが、異常血管が複雑に発達しているせいで造影剤が肝心の静脈瘤にまで入りません。この状態で硬化剤(血管を詰めてしまう液体の薬)を入れても硬化剤は静脈瘤に届きませんので、適切な治療はできません。

新しいカテーテルを用いたBRTO

BRTOという治療は比較的簡単に成功する場合もありますが、このかたのように異常血管が複雑な場合は従来の方法では治療できないことも時に経験されます。当科では、他の疾患に対するIVRで培った様々な技術と知識を動員してBRTOを行っています。このかたも通常のBRTOでは治療が困難でしたので、「風船が2個ついた最新のカテーテル」を使用しました。非常に柔らかいカテーテルですので、迷路のように蛇行した血管の中を通って、先端についた1個の風船をかなり上まであげることが出来ました。

新しいカテーテルを用いたバルーン下逆行性経静脈的塞栓術の写真

丸で囲ったところに2個の風船が見えます。迷路のように複雑に発達した静脈瘤のなかを、小さな方の風船が奥へ奥へと入っていって、最終的には治療したい静脈瘤のすぐそばに到達することができました。2個の風船を同時に膨らませることで、胃静脈瘤の血流をしっかりと停滞させることができます

硬化剤を注入

2個の風船を膨らませた状態で、カテーテルの先端から胃の静脈瘤の中に硬化剤を注入しました。最初に行った通常のBRTOでは胃静脈瘤に硬化剤が入りませんでしたが、この新しいカテーテルを使うことで胃静脈瘤の中に硬化剤がしっかりと入りました。

胃静脈瘤に硬化剤を注入、画像に硬化剤が黒く写っている写真

丸で囲んだ部分が胃静脈瘤の本体です。胃静脈瘤の中に入った硬化剤が黒く写っています。

治療後のCT

後日撮影されたCTです。胃静脈瘤は全て見えなくなっています。内視鏡でも胃静脈瘤は軽快していました。

治療後のCT写真

マルチスライスCTで門脈の血管を三次元的に作りました。胃静脈瘤は見えなくなっています。

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更新日:2022年05月11日