胃静脈瘤、肝性脳症に対するBRTO

IVRの部屋

胃静脈瘤、肝性脳症に対するBRTO

BRTO(balloon-occluded transfemoral obliteration)は、大きな風船のついた特殊なカテーテルを用いて行うIVR治療の1つです。特殊な治療法ですが、従来の他の治療ではなかなか治療しえないケースで時に非常に有効となります。当科では、1部の胃静脈瘤や肝性脳症の患者さんに対してこの治療法を積極的に行っています。症例を提示して簡単に説明いたします。

胃静脈瘤も肝性脳症も、慢性肝炎や肝硬変のかたに起こりやすい病気です。肝臓が硬くなって機能が低下すると、肝臓に流れるはずの門脈の血液の流れが滞って、本来とは異なる別の経路に流れるようになります。この別の経路(側副路と呼びます)の血管がどんどん発達すると食道静脈瘤や胃静脈瘤となり、何かの拍子に瘤が破裂すると吐血といった症状が出現します。また、門脈の血液の中にはアンモニアなど、体にとって不必要な成分が多く含まれているのですが、肝臓はこれを解毒する機能があります。門脈の血液が側副路に優先的に流れてしまうと、肝臓に門脈の血液が十分に流れなくなって、アンモニアが解毒できなくなり、体のアンモニアの数値が上昇し肝性脳症という意識レベルに影響を及ぼすような病気が出現します。

このように、肝臓以外の経路に流れる異常な門脈の血流(側副路)は、様々な症状を引き起こす可能性があります。日本では内視鏡の技術が発達していますので、多くの食道静脈瘤や胃静脈瘤の治療が内視鏡下に行われ、非常に良好な成績が示されています。また肝性脳症に対しても内服治療や点滴によって多くの場合軽快いたします。しかし、従来のこのような治療法では治せない1部の胃静脈瘤や肝性脳症のかたの中には、BRTOが非常に有効な場合があります。

BRTOは異常な側副路を血管の中から閉塞する手技の1つで、バルーンという風船を用いて側副路の血流の流れを遮断し、その上で様々な血管塞栓物質を用いてこれを詰めてしまう治療法です。側副路は非常にうねうねと蛇行していることが多く、人によってはその走行も迷路のように複雑となりますので、比較的難しいIVR治療といえます。当院では様々な形状のカテーテルや血管塞栓物質を用いてこの治療を積極的に行い、有効な治療法であると考えています。ただし、実際にこの治療法が必要なのかどうか、有用であるのか、という判断は難しく、治療前に綿密な全身評価が必要になりますので、担当医とよくご相談されてください。

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放射線診断科、IVR科、乳腺画像診断科

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更新日:2022年05月11日