救命救急センターのご案内
お知らせ
・当院救急科の加納医師(他9名)の査読付き論文が、アメリカ合衆国の医学雑誌「The American Journal of Emergency Medicine」に掲載されました。(2022年10月25日)
・藤枝市立総合病院救命救急センター5周年を記念してパンフレットを作成しました。(2021年12月13日)
・当院救急科の麻喜医師(他6名)が、令和2年度日本救急医学会科学論文賞の「優秀症例報告賞」を受賞しました。(2020年11月19日)
はじめに
平成29年4月1日より当院は救命救急センターに指定され、志太榛原二次医療圏で初の3次救急を担う施設となりました。志太榛原地域は人口46万人余り、面積1209㎢の二次医療圏であり4市2町から構成されております。当センターでは、医療圏内の救急病院や診療所とも連携を図り、志太榛原地域の今後の救急医療のますますの発展・向上に努めてまいります。
救命救急センターとは
救命救急センターとは、急性心筋梗塞、脳卒中、重症感染症(敗血症性ショックや重症肺炎など)、多発外傷、出血性ショック、心肺停止、中毒、重症頭部外傷など、二次救急では対応できない複数診療科領域の重篤な、そして緊急性の高い患者さんに対して迅速かつ高度な医療技術を提供し、救命に努めていく三次救急医療機関です。
当センターは救急外来部門(ER)、救急病棟部門を備え、24時間体制で救急患者の受け入れを行っております。通常の二次救急対応に加え、重症患者については別に「三次救急選定基準」を設けることで救急隊による迅速な重症度の判定を可能としました。三次選定症例に対しては、救急専従医が直接救急隊からの受け入れ要請に対応し、迅速な受け入れ準備と初期診療、入院対応と集中治療介入を行っております。救急専従医による迅速な初療に加え、各専門診療科との協力体制もスムーズに構築されており、疾患毎に迅速な専門的治療介入を実現しております。センター内には手術室と複数の初療室を始めとして、CT・一般レントゲン撮影室、超音波検査室と、20床の救急病棟が完備されております。
急性心筋梗塞・致死的不整脈・肺動脈塞栓症などは時に心肺停止となることがあります。これらの症例において通常の心肺蘇生法では自己心拍再開しない症例では、体外循環装置(PCPS)を迅速に導入して蘇生を行う体外循環式心肺蘇生(ECPR)を2015年度より導入しております。この治療法は静岡県ではまだごく一部の施設でしか行えていない状況でありますが、一定の救命の効果をあげています。そして、循環器内科と連携し、原疾患が急性心筋梗塞であれば速やかに冠動脈インターベンション(PCI)を行い、心停止蘇生後の神経集中治療の介入を行っております。
院外心肺停止搬送症例の蘇生率向上にむけた当院での取り組みと実績
脳血管障害において、適応のある急性期の重症脳梗塞症例については脳神経外科・放射線科と連携し、カテーテルによる脳血管内治療も行っております。また、多発外傷や消化管、肺などの出血性症例についても各専門診療科や放射線科と連携し、必要応じてカテーテルインターベンションによる塞栓術などの治療を行います。
他科の医師、看護師など多職種を交え、シミュレーション活動も行い、より高度な救急患者受け入れ体制を提供できるように日々活動しています。
救命救急センター長あいさつ
救命救急センター長
三木 靖雄
志太榛原2次医療圏で初の救命救急センターとなり、徐々に地域の医療機関や医師会、開業医などからも認知されるようになってきました。また、当救命救急センターを管轄とする志太消防本部や静岡市消防本部との連携も強化され、地域の救急を担う体制づくりを行ってきました。
救命救急センターにはICUはありませんが、救急病棟があり重症患者の受け入れもしています。人工呼吸器管理や血液浄化療法などICU管理が必要な患者を管理し、また肺炎や尿路感染などのうち重症化している感染症患者や心不全などの患者も管理しています。
救急科はwalk inでの患者(自分で来院する患者)や救急車搬送患者の初期対応を行っており、診断や処置が終われば専門診療科にお願いしています。しかし、重症患者や多発外傷患者、熱傷患者などは救急科での入院加療としており、救急病棟での入院加療を行います。
救急科研修医は1・2年目を合わせて4~5名程度が毎月研修しています。救急外来での診察や処置に加え、救急科で入院している患者さんの治療にもあたります。
救急医はまだまだ足りない状況であり、当院での救急科専門研修を積極的に受け入れています。
救急診療部門
【三次救急搬送】
当院は救命救急センターであるため救急医が24時間体制で専用の電話端末を携帯し、指令課からの事前管制や救急隊からの三次救急受け入れ要請応需、救急隊への特定行為の指示などを行っております。その際、緊急度・重症度が高く迅速で高度な救急医療提供が必要と考えられる症例の判断基準として、三次救急選定基準を下記のように設けています。
【三次救急選定基準】
当センターは、志太榛原二次医療圏の唯一の救命救急センターであるため、藤枝市のみならず志太榛原二次医療圏全体の三次救急を受け入れる使命があります。これまでは管轄内外で異なる基準を設けておりましたが、二次医療圏全体で統一した三次救急選定基準へと改定しました。下記リンクからダウンロード可能ですので、ご活用ください。
昨今からトラウマバイパスの重要性は国際的に認められておりますが、現実的で具体的な基準が明瞭でなかったため、客観的に評価できるようなトラウマバイパス基準を制定しました。志太榛原二次医療圏のみならず近隣の医療圏につきましても、基準に合致する場合はトラウマバイパスを積極的にご使用いただき当院へ選定いただけますと幸いです。
救命救急センターの救急診療部門は、外来部門・救命救急センター病床部門に分かれております。一次・二次救急対応としてwalk in症例、紹介症例、二次救急搬送の診療については平日日勤帯は救急専従医、夜間休日については内科救急当直医・外科救急当直医が担当しております。三次救急搬送患者初療と救命救急センター病床管理については24時間体制で救急専従医が対応しております。小児・産婦人科につきましては、各々の専門科で主に担当しております。
walk in症例についてはJTASと呼ばれる重症度判定のトリアージ基準をもとに患者さんの緊急性・重症度を的確に判断し、生命危機のある患者さんに対して治療介入が遅れないようなシステムを構築し初期診療を行っております。
救急病棟は20床を有した救命救急センター病床として運用しております。心肺停止蘇生後、うっ血性心不全、重症肺炎、敗血症性ショック、多発外傷などの重症救急患者さんの入院管理・集中治療を担っています。気管挿管・人工呼吸管理や持続的血液濾過透析(CHDF)などの集中治療を必要とする患者さんから、病状によって悪化リスクの高い厳重経過観察が必要な患者さんなど、救命救急センターの要項を満たす緊急・重症症例を主にケアしています。
≪救急外来師長より≫
救命救急センターの救急外来部門では、小児から高齢者まで幅広い年代の方々の対応をしています。年間約16000人の救急患者を受け入れ、中でも救急車の受け入れは年間約5300台(1日あたり14〜16台)に対応し、地域に根ざした救急医療の提供を行っております。また24時間体制で他部門と連携を図り、救急医と協力しながら看護スタッフも特殊検査技術向上にチーム一丸となって取り組んでいます。
≪救急病棟師長より≫
救急病棟部門の看護師は多種多様な緊急入院患者さんに対応できるよう日々研鑽しています。また、患者さんや御家族が安心・安全に治療が受けられるように迅速な対応と細やかな配慮ができる看護師の育成を心掛けています。
急性期集中治療をも担う当病棟では人工呼吸器や人工透析、持続的血液濾過透析(CHDF)などの管理を行うことも多々あり、集中ケア・家族看護にも力をいれて取り組んでいます。突然の疾病や外傷などで緊急入院される患者さん・その御家族は多くの不安を抱えての入院生活となります。そのためにも、救急病棟として必要とされる看護とは何か、それをどう実践していくか、日々の業務のみでなく看護研究・学会発表などの学術的活動をも通して取り組んでまいります。
ヘリポート
当院にはドクターヘリの発着が可能なヘリポート設備があります。
静岡県内では東部と西部で各1機、計2機のドクターヘリが運航し
時速約200kmで上空を移動するドクターヘリは、交通渋滞の影響を受けることなく短時間で患者さんを搬送することができます。
ドクターヘリ着陸の様子
患者搬送の様子
山間部で怪我をされた患者さんの搬送や、緊急性の高い患者さんの病院間搬送、災害時の広域搬送などで特に力を発揮します。
当院のヘリポート設備は立体駐車場(第3駐車場)の屋上部分にあります。離着陸帯は22.5m×22.5m、最大離陸重量(全備重量)は8.6tとなっており、ドクターヘリだけでなく、より重量の大きい県の防災ヘリなどの発着にも対応することができます。
実績
救急病棟 入院患者統計
平成29年度 | 平成30年度 | 令和元年度 | ||
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新入院患者数 | 1,785 4.9(人/日) |
1,531 4.2(人/日) |
1,434 3.9(人/日) |
|
病棟占有患者数 | 7,113 19.5(人/日) |
7,103 19.5(人/日) |
6,929 19.0(人/日) |
|
年齢(平均±標準偏差)(四分位数) | 72±18(1,64,76,84,104) | 73±17(2,66,77,85,102) | 72±17(3,63,75,84,100) | |
退院時転帰 | 退院・転院(%) | 1,552(86.9) | 1,338(87.4) | 1,255(87.5) |
死亡(%) | 233(13.1) | 193(12.6) | 179(12.5) | |
新入院患者数 | 救急科 | 534 | 524 | 586 |
循環器内科 | 365 | 309 | 256 | |
消化器内科 | 240 | 206 | 217 | |
呼吸器内科 | 214 | 206 | 164 | |
脳神経外科 | 85 | 92 | 86 | |
外科 | 88 | 38 | 28 | |
整形外科 | 141 | 31 | 11 | |
腎臓内科 | 35 | 29 | 23 | |
呼吸器外科 | 18 | 26 | 14 | |
糖尿病・内分泌内科 | 9 | 23 | 8 | |
泌尿器科 | 6 | 15 | 17 | |
皮膚科 | 12 | 12 | 7 | |
心臓血管外科 | 3 | 6 | 2 | |
耳鼻咽喉科 | 10 | 5 | 5 | |
リウマチ科 | 8 | 3 | 6 | |
形成外科 | 8 | 3 | 2 | |
内科 | 13 | 2 | 2 | |
産婦人科 | 3 | 1 | 0 | |
神経内科 | 3 | 0 | 0 | |
心療内科 | 5 | 0 | 0 | |
歯科口腔外科 | 0 | 0 | 0 | |
小児科 | 1 | 0 | 0 |
救急病棟 疾患別占有割合
2018年度 救急病棟 疾患別占有割合(グラフ) (PDFファイル: 242.8KB)
2017年度 救急病棟 疾患別占有割合(グラフ) (PDFファイル: 58.0KB)
救急外来
令和元年度 | 令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 | |
---|---|---|---|---|---|
受診患者数 | 14,705 | 12,548 | 13,817 | 14,773 | 15,438 |
救急車台数 | 5,142 | 4,549 | 4,914 | 5,772 | 6,148 |
三次救急受入数 | 604 | 880 | 919 | 1,029 | 1,023 |
ドクターカー出動 | 22 | 48 | 46 ※10月まで |
40 | 54 |
ラピッドレスポンスカー出動 | - | - | 157 ※11月から |
413 | 419 |
心肺停止症例数 | 180 | 163 | 158 | 159 | 189 |
緊急PCPS挿入症例数 | 8 | 7 | 10 | 8 | 5 |
ダメージコントロール手術 | - | - | - | 3 | 10 |
救急外来からの入院患者数 | 5,073 | 4,601 | 4,903 | 5,344 | 5,361 |
緊急心臓カテーテル件数 | 111 | 109 | 126 | 142 | 170 |
緊急内視鏡件数 | 209 | 213 | 153 | 262 | 227 |
緊急手術数 | 125 | 133 | 166 | 149 | 190 |
緊急透視件数 | 116 | 106 | 84 | 105 | 90 |
緊急アンギオ件数 | 34 | 61 | 75 | 79 | 92 |
院外心肺停止搬送症例の蘇生率向上にむけた当院での取り組みと実績(2020年6月現在)
救命救急センター指定後、院外心肺停止の蘇生率向上のため、救急隊との連携から搬送後の救急医による統一された蘇生術、蘇生後における神経集中治療に至るまでの「救命の連鎖」の質を向上させています。また、経皮的心肺補助装置(PCPS)と呼ばれる体外循環装置を使用した心肺蘇生術(ECPR)も導入し、適応のある症例には積極的に行っています。
ECPRの様子
患者搬入前(救急隊からの事前情報)から、準備にあたります。
情報収集
臨床工学技士によるプライミング
医師数名は滅菌ガウンを着用して待機
ECPR実施中の様子
救急医・循環器内科医・臨床工学技士・超音波技師・看護師・研修医など多職種が連携して蘇生術とPCPS挿入を同時に行います。
当院における院外心肺停止全症例のデータ(2015.4〜2020.3までの5年間)
上記のように、5年間の院外心肺停止の生存率・社会復帰率は、公表されている総務省のデータと比して、約2.5倍の良好な成績となっています。
過去5年間のうち、目撃がある心原性の心停止症例のデータ
市民もしくは救急隊の目撃がある心原性の心肺停止に限定すると、5年間で165例の搬送があり、1ヶ月社会復帰率は26.2%(43例)と全国・静岡の約2倍の成績でありました。
そのうち、「初期波形(救急隊が到着した際に最初に得られた波形)が心室細動(VF)を呈していたもの」については一般的にも最も救命率が高く、現在はAEDと呼ばれる自動体外式除細動器の市民の使用も可能となったことから救命率はここ数年で向上しています。
目撃のある心肺停止のうち、救急隊初期波形がVT/VFの症例(過去5年)
上記のように、当救命救急センターに搬送された目撃のある心原性の初期波形VT/VF症例は60%を超える社会復帰率(26例)を呈しており、静岡県の累積データの3倍の成績となっております。この中には前述のPCPSと言われる体外循環装置を使用したECPRによって社会復帰に至った5名も含まれております。この5名については言わばPCPSがなければ救命できなかった症例と言えます。
体外循環装置を使用した心肺蘇生術(ECPR)が適応になる症例は、難治性のVT/VFや肺塞栓症を含め、重症低体温症、中毒など様々な病態で考慮されます。過去5年間でECPRによって社会復帰を得た9例の内訳を下記の表にまとめます。
2015.4から2020.3までに行ったECPRのうち1か月後社会復帰した9名のデータ
これらの症例は、多く若年者の心肺停止症例であり、通常型の心肺蘇生術では自己心拍再開が得られない症例でした。PCPSを速やかに導入することで救命を達成し、その後の集中治療を経て社会復帰を得た、当地域において価値ある9例です。
院外心肺停止患者の蘇生治療と救命率・社会復帰率の向上は、救命救急センターの主要な任務の一つです。当院は藤枝市のみならず志太榛原地域全体をカバーすべきセンターであります。救急隊との連携をより一層充実させ、広域二次医療圏内の蘇生率をさらに向上できるように、努めてまいります。
救急体制
三次救急対応医師・救急専従医師 | 2~4名+研修医2~4名 |
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ドクターカー当番医 | 1名 |
救急外来看護師 | 10~12名(一部、放射線科兼務) |
救急病棟看護師 | 8~9名 |
事務 | 2~3名 |
平成27年4月から救急専従医師が専従で勤務します。
三次救急対応医師・救急病棟医師 | 1名 |
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内科系医師・外科系医師 | 2名+研修医2~4名 |
救急外来看護師 | 3~5名 |
救急病棟看護師 | 5~6名 |
薬剤師 | 1名 |
事務 | 2~5名 |
放射線技師(エコー、レントゲン) | 2名 |
検査技師 | 1名 |
小児担当医師 | (1名)曜日によって診察時間がことなります |
その他医師(ICU・NICU) | 2名 |
診療の順番については、より緊急性の高い患者さんを優先して治療する場合があります。
研修医も治療に参加することをご了承ください。
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更新日:2024年07月01日