救急科

救急科医師集合写真

科紹介

当科は2022年度より10名体制となりました。

救急外来での一次、二次救急対応と、総合診療科領域の入院管理に加え、24時間体制の三次救急対応と救急集中治療管理、ドクターヘリ症例の受け入れを行っています。2020年8月から志太消防と連携して、まずは医師ピックアップ方式による病院前診療を本格的に開始しました。2021年11月からは、ラピッドレスポンスカーの実証実験もはじまり、地域の救命率向上と社会復帰の向上を目指し、救命医療に取り組んでいます。あわせて、病院救急車についても運用を開始しており、転院搬送を中心に実働しています。

若手医師の育成・教育にも取り組んでおり、2022年度より日本専門医機構認定の「救急科専門医育成施設」の基幹病院として、救急科専門医研修プログラムを実施しています。

救急診療についての解説図

1. 救急総合診療部門

カンファレンスの様子

カンファレンス風景

・ 主に一次救急・二次救急として日勤帯は救急科、夜勤帯・休日については内科当番・外科当番医師が救急外来初療を担います。Walk in から救急車(二次救急)の症例について、内因性、外因性問わず対応します。

・ 専門科疾患については各科の24時間の協力体制が備わっており、治療が必要な症例の引き続きの対応を行って頂いています。診断未確定症例を含む総合診療科症例(肺炎・心不全・尿路感染症・敗血症・脳卒中・中毒・動物咬傷・虫咬傷、環境異常、整形的内科疾患、整形外科保存症例など)については救急科や当番科にて入院継続管理を行います。

・ 当施設は「病院総合診療専門医育成施設」でもあり、当科に総合診療専門医が常勤しています。

2. 救急集中治療部門

三次救急搬送

・ 救急科が24時間体制で担っています。別に指定する三次救急搬送基準に該当する重症緊急症例について、指令課や救急隊からの連絡を救急医が直接行い、救急隊特定行為の指示をはじめ、救急外来初療とその後の集中治療を担います。重症症例のうち、循環器疾患や脳外科疾患を始めとする専門診療科疾患については各科での管理を依頼しますが、他の多くは各科と連携を取りつつ当科にて集中治療管理を行います。

・ 静岡県には、西部・東部に計 2 機の Dr.ヘリが運用されていますが、Dr.ヘリ症例の受け入れも積極的に行っています。

ドクターヘリ受入風景

ドクターヘリ受入風景

ドクターヘリ受入準備


・ 当科では一定の難治性心肺停止に対して、経皮的心肺補助装置(PCPS)を使用した 体外循環式心肺蘇生(ECPR)を積極的に行い、多くの社会復帰症例を経験しました( 院外心肺停止搬送症例に対する蘇生率向上にむけた当院での取り組みと実績 )。今後も藤枝市のみならず、志太榛原地域全体に貢献できるような体制作りを進めていきます。

三次救急

重症外傷診療

重症体幹部外傷におけるショック状態の患者に対しては、外傷外科医による開腹手術の適応判断と早期の実施が求められます。

日本外傷学会が2021年に出した「地域における包括的外傷診療体制の提言」に記載されている「外傷蘇生センター」の要件には、

  • 緊急コールが5分以内に救急医が初療開始する
  • 緊急コールから30分以内に外傷外科医・IVR医による止血処置を行える体制があること
  • MTP(大量輸血プロトコル)が院内に整備され発動基準が明確なこと

が含まれています。

当院救命救急センターは、この要件を満たす体制が整備できています。

ダメージコントロール手術の様子

来院から30分で初療室にてダメージコントロール手術開始したときの様子。

それまでにMTPを発動させ、LEVEL1による緊急輸血投与、REBOAによる大動脈遮断準備、緊急麻酔導入が実施されました。

穿頭ドレナージ

初療室による緊急穿頭ドレナージ

手術室まで間に合わないと判断された症例においては脳神経外科医と協力して初療室において穿頭ドレナージ術を行うことがあります。

救急集中治療

・ 当科で入院対応する主な症例群は、「心肺停止」「多発外傷・高エネルギー外傷」「ショック」「敗血症性ショックなどの重症感染症」「重症糖尿病や重症代謝疾患」「重症呼吸不全」「うっ血性心不全」「中毒全般(薬物中毒や動物・虫咬傷など)」「痙攣重積発作」「重症脳卒中」「環境異常(熱中症・低体温症)」などであり、他科の重症症例も含め、救命救急センターの集中患者管理を各科と連携して担います。

・ 当施設は「集中治療専門医育成施設」でもあり、集中治療専門医が当科に常勤しています。

病棟集中治療

3. 救急IVR部門

・ 高エネルギー外傷・多発外傷や、急性期脳梗塞の血栓回収など、救急領域にはカテーテル治療が有用な場合が多くあります。当施設は放射線科と連携し多症例のIVR (Interventional Radiology:画像下治療)を行っています。

・ 当院は「IVR専門医育成施設」でもあり、当科にIVR専門医が常勤しています。

4. 小児救急部門

小児科と連携し、小児救急を担っています。けいれん重積時の初期対応など、救急医、小児科医、看護師と連携シミュレーションを行うなど、小児救急の新たな体制づくりを行っています。

5. ドクターカー運用(ラピッドレスポンスカー運用)

当院のドクターカーは、従来から転院搬送症例に使用していますが、2021年11月よりラピッドレスポンスカーの運用を開始しており、救急現場への医師派遣にも活用されています。

ドクターカー
ラピッドレスポンスカー

初期研修医におけるラピッドレスポンスカー実習

当院の初期研修医は、救急科ローテーション中にラピッドレスポンスカー(RC)実習を行なっています。

上級医と看護師と共に、RC出動時に現場へ直行し、実際の救急現場で消防救急隊の皆様と行なっている病院前救護、病院前救急診療について実践してもらいます。普段の救急外来診療とはひと味違う環境での実習は、とても刺激になっているようです。症例によっては現場診療のみならず、消防救急車での患者搬送時の同乗も行なっています。

ラピッドレスポンスカーと研修医
出動の準備風景
出動のためラピッドレスポンスカーに向かって走る研修医
病院前救急診療の様子

6. 救急隊との活動

1)MC(メディカルコントロール)と検証会

院外心肺停止や切迫心停止の症例に救急隊が行える特定行為についてオンライン MC による特定行為指示と、月 1 回の検証会を行っています。

2)ワークステーション方式(建設中)

志太消防と連携し、救急隊を 1 隊当院救命救急センターへ配備し、院内での救命士の育成や救急隊との連携をさらに密になるような体制作りを行っています。

3)病院前診療

2020年8月より志太消防と連携して、ピックアップ方式での病院前診療がはじまり、2021年11月よりラピッドレスポンスカーの運用を開始しました。外傷、胸痛、急性期脳卒中、ECPRの適応となり得る心肺停止患者などへの早期医療介入が可能となり、救急患者の予後改善に向けて、地域に貢献していきます。消防からは指令課からの覚知要請を原則として、病院前診療の効果について実践・評価を繰り返し、より良いものを提供できるようにしていきます。

実際の活動

さまざまな現場に医師・看護師が向かい、救急隊の方々と協力して診療にあたります。

国道1号バイパスでの活動

国道1号バイパスでの活動

救急隊の方々との活動

救急隊の方々との活動

救急車内での医療行為

救急車内での医療行為1

救急車内での医療行為

救急車内での医療行為2

現場での活動

現場での活動1

現場での活動

現場での活動2

7. Off-job(On the job)トレーニング

救急医学会認定 ICLS コースを「志太榛原 ICLS」として地域近隣病院と連携して定期開催を行っています。また日本集中治療教育研究会認定 FCCS や日本外傷診療研究機構認定 JATEC へのインストラクター参加、日本内科学会認定 JMECC 開催など救急集中治療外傷診療に関わるトレーニングコースへの運営・参加を行っています。

他、JPTEC、ACLS、BLS、SCLS、PALS、MCLS など、多くのトレーニングコー スへの参加を行い研鑽を積んでいます。

8. 災害医療(DMAT)

当院は災害拠点病院の指定を受けています。DMAT 隊員としては医師 3名、看護師 5名、業務調整員(ロジ) 5名の構成で、医師のうち 2名が救急科医師となっています。

当院の災害訓練では DMAT 隊員が計画を立てていますが、救急科は訓練の中心として活躍しています。局地災害による多数傷病者の発生時には病院の受け入れを救急科が中心となって行っています。

スタッフ紹介

スタッフ紹介の概要  ※詳細はこちら
職名 氏名 卒業年 学会専門医資格等
救急担当副院長
兼救命救急センター所長
三木 靖雄 平成元年卒 日本救急医学会救急科専門医
麻酔科標榜医
日本航空医療学会航空医療医師・指導医
医学博士
愛知医科大学客員教授
日本DMAT隊員
科部長 角山 泰一朗 平成11年卒 日本救急医学会認定指導医
日本救急医学会認定救急科専門医
日本外科学会認定外科専門医
日本外傷学会認定外傷専門医
日本Acute Care Surgery学会認定Acute Care Surgery認定外科医
医学博士
JETECインストラクター
AASETインストラクター
DSTCインストラクター
ATOMインストラクター
STOP THE BLEEDインストラクター
東京DMAT隊員
科長 北村 真樹 平成12年卒 日本救急医学会認定救急科専門医
日本外科学会認定外科専門医
日本DMAT隊員
科長 増田 崇光 平成19年卒 日本救急医学会救急科専門医
日本外科学会外科専門医
日本病院総合診療医学会認定病院総合診療医
医学博士
ICLSアシスタントインストラクター
日本DMAT隊員
科長 麻喜 幹博 平成20年卒 日本救急医学会認定救急科専門医
日本循環器学会循環器専門医
日本集中治療医学会集中治療専門医
日本病院総合診療医学会認定病院総合診療医
日本内科学会認定内科医
臨床研修指導医
ICLSコースディレクター
JMECCインストラクター
医長 加納 誠也 平成23年卒 日本救急医学会救急科専門医
日本集中治療医学会集中治療専門医
日本内科学会認定内科医
日本病院総合診療医学会認定病院総合診療医
臨床研修指導医
FCCSアシスタントインストラクター
東京DMAT隊員
医長 竹内 誠人 平成25年卒 日本救急医学会救急科専門医
日本インターベンショナルラジオロジー学会専門医・指導医
日本脈管学会脈管専門医
日本腹部救急医学会腹部救急認定医
日本旅行医学会認定医
日本病院総合診療医学会認定病院総合診療医
歯科医師
JATECインストラクター
ICLSインストラクター
医長 内田 香名 平成26年卒 日本救急医学会救急科専門医
日本病院総合診療医学会認定病院総合診療医
日本医師会認定産業医
ICLSインストラクター
JPTECインストラクター
静岡DMAT-L隊員
医長 山森 温 平成27年卒 日本救急医学会救急科専門医
日本病院総合診療医学会認定病院総合診療医
日本プライマリ・ケア連合学会認定プライマリ・ケア認定医・指導医
日本専門医機構認定総合診療専門研修特任指導医
日本離床学会認定指導医
全日本病院協会認定総合医
医長 松山 周平 平成27年卒 日本麻酔科学会認定麻酔科認定医・専門医
日本老年麻酔学会認定医
麻酔科標榜医
日本集中治療医学会集中治療専門医
日本小児麻酔学会小児麻酔認定医
日本臨床栄養学会認定臨床栄養医
日本医師会認定健康スポーツ医
ICLSインストラクター
日本不整脈心電学会心電図検定1級
医員 鈴木 秀聖 令和4年卒  

科の目標

実績

救急科 外来実績

実績の詳細
  平成30年度 令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度
受診患者数 15,489 14,705 12,548 13,817 14,773
救急車台数 5,519 5,142 4,549 4,914 5,772
三次救急受入数 545 604 880 919 1,029
ドクターカー出動 - 22 48 46
※10月まで
40
ラピッドレスポンスカー出動 - - - 157
※11月から
413
心肺停止症例数 163 180 163 158 159
緊急PCPS挿入症例数 9 8 7 10 8
ダメージコントロール手術 - - - -  
救急外来からの入院患者数 5,192 5,073 4,601 4,903 5,344
緊急心臓カテーテル件数 153 111 109 126 142
緊急内視鏡件数 187 209 213 153 262
緊急手術数 114 125 133 166 149
緊急透視件数 88 116 106 84 105
緊急アンギオ件数 18 34 61 75 79

救急科 入院実績

救急科入院患者統計
  平成30年度 令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度
新入院患者数 614 667 795 688 865
退院患者数 389 409 629 602 728
24時現在患者数 4,027 4,977 8,264 8,966 9,333
延べ入院患者数 4,416 5,386 8,893 9,568 10,061
死亡 88 82 113 96 102
平均在院日数 8.0 9.3 11.6 13.9 11.7

※平均在院日数=24時現在患者数÷((新入院+退院)÷2) 

詳細(延べ数)
  平成28年度 平成29年度 平成30年度 令和元年度
院外心停止(外来死亡含む) 153 130 163 180
心停止蘇生後症候群 32 55 51 55
敗血症・敗血症性ショック 21 35 65 60
侵襲性肺炎球菌感染症   1 2 2
劇症型溶連菌感染症(STSS) 1 2   1
髄膜炎 1 4 2  
脳腫瘍・脳炎   2 2  
肺炎・急性呼吸急迫症候群 74 116 147 103
重症レジオネラ肺炎 1      
腹部感染症 6 4 12 10
感染性心内膜炎     1  
尿路感染症・急性腎盂腎炎 15 31 39 15
蜂窩織炎 6 6 2 5
壊死性筋膜炎 1 1 2 2
破傷風   1    
頸部膿瘍 1      
窒息 6 9 3 7
溺水   3 3 3
喀血   2 2  
緊張性気胸・気胸(内因性) 2 2 4 4
COPD急性増悪 2 6 5 6
気管支喘息   2 6 2
うっ血性心不全 34 60 51 60
心原性ショック 6 6 8 12
急性冠症候群 4 16 28 36
肺塞栓症   3 1 2
劇症型心筋炎       1
不整脈 13 19 18 14
心タンポナーデ 2 3 5 4
急性大動脈解離 2 3 3 8
大動脈瘤・大動脈瘤破裂   19 2 2
消化管穿孔・イレウス 5 9 3 6
消化管出血・出血性ショック   17 19 11
下肢急性動脈閉塞症     1 1
上腸間膜動脈血栓症   1    
非閉塞性腸管虚血   2 3 2
肝炎・肝硬変など 8 10 2 4
脳出血・くも膜下出血 8 47 50 56
急性期脳梗塞 14 50 66 53
急性水頭症       1
痙攣重積・てんかん 18 65 46 28
めまい症 5 6 3 5
重症筋無力症       1
慢性神経疾患 19 22 3 13
脱水・電解質異常・代謝異常 57 47 32 23
急性腎不全 14 25 9 25
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)   1 1 2
横紋筋融解症 7 1 7 4
重症糖尿病(DKA/HHSなど) 12 8 8 6
低血糖 3 13 9 4
脳下垂体疾患 1 2    
血液内科疾患     14 15
甲状腺疾患・甲状腺クリーゼ 2 4   3
薬疹   3   1
アナフィラキシー・アナフィラキシーショック 8 9 8 10
動物咬傷 2 4 4 7
中毒 30 31 24 43
熱傷 6 7 3 7
熱中症 14 13 8 14
電撃症     1  
低体温症 11 11 7 16
悪性腫瘍 7 25 30 19
血球貪食症候群     2  
播種性血管内凝固症候群(DIC) 10 6 13 10
貧血 2 3 6 5
偽痛風 8 1 4 6
脊髄硬膜外血腫 2   2  
化膿性脊椎炎       3
腰痛疾患(内科的整形症例) 9 8 10 3
精神疾患(うつ病・統合失調症など) 29 31 20 27
高エネルギー外傷・多発外傷・出血性ショック 17 45 44 43
頭頸部外傷 74 110 85 86
胸部外傷 16 25 23 28
腹部外傷 4 14 8 15
整形外科的外傷 32 67 67 63

業績集

救急患者数統計

臨床研究のお願い

「院外心停止例救命のための効果的救急医療体制・治療ストラテジの構築に関する研究」への協力のお願い

本邦では年間7万人を超える心臓突然死が発生しております。病院前救急医療の発展により、院外心停止例の社会復帰率は改善していますが、いまだに8%程度と非常に低いことが現状です。さらなる社会復帰率向上のために病院到着後の集中治療の効果が期待されていますが、その治療実態と効果は明らかではなく効果的な治療法は確立されていないのが現状です。本研究を前向きに検討・分析し、有効な集中治療などの治療ストラテジを検討することを目的とし、日本救急医学会が主導している多施設共同研究の参加のための研究への参加を行っております。

対象は当院救命救急センターに搬送された院外心停止のうち、救急隊が蘇生行為を行った症例について、個人情報を保護した上でデータの登録を行わせていただきます。本研究に参加・協力することに同意されない場合は、以下までご連絡ください。

連絡先

藤枝市立総合病院 救急科
救命救急センター長 三木 靖雄
電話番号:054-646-1111(代表)

医師の受賞歴

令和2年11月19日
  内容
論文名 犬咬傷数日後に心肺停止で搬送されたCapnocytophaga canimorsus 感染症による劇症型敗血症の一例
発表者名、共同研究者名 麻喜 幹博、増田 崇光、粳田 和美、安田 和世、鈴木 道雄、今岡 浩一、三木 靖雄
掲載雑誌 日本救急医学会雑誌. 2020;31:29-34
受賞 令和2年度日本救急医学会科学論文賞 優秀症例報告賞
この記事に関するお問い合わせ先
救急科

住所:静岡県藤枝市駿河台4丁目1番11号
電話番号:054-646-1111(代表) ファクス:054-646-1122
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更新日:2024年04月01日