脳動静脈奇形

脳動静脈奇形とは?

脳の動脈と静脈が異常な血管塊を形成する病気で、先天性(生まれつき持っている)の疾患と考えられています。徐々に動脈や静脈が拡張し、あるとき破裂し脳出血やくも膜下出血を起こします。脳動静脈奇形は脳出血の原因の2%程度と比較的まれな病気ですが、50歳未満で発症した脳出血の原因の12%を占め、若年者の脳出血の原因疾患として知られています。この病気を持つ方のうち、2.2%が毎年出血し、0.68%が毎年死亡しています。頭痛やけいれんの原因になることもあります。わが国では脳ドックの普及も相まって、出血する前の脳動静脈奇形(未破裂脳動静脈奇形)も見つかるようになってきました。

治療

脳動静脈奇形は開頭摘出術によって根治する(完全に治し切る)ことが可能な疾患です。しかし大きいものや脳の深くにある場合は摘出がとても難しく、摘出術が躊躇されることもまれではありません。脳動静脈奇形の治療には開頭摘出術のほか、血管内治療、放射線治療(ガンマナイフ)があります。これらはそれぞれ単独で行われることもありますが、血管内治療と開頭摘出術、放射線治療と血管内治療、などと組み合わせることで、従来手術が難しかったケースでも、より安全に治療できることがわかってきました。とくに血管内治療において、ONYX(オニキス)という塞栓物質を用いて脳動静脈奇形の中を十分に塞栓しておくと、その後に行う開頭摘出術の際の出血を大幅に抑えることができるため、ほとんどのケースでONYXによる治療を先行させるよう心がけています。ONYXは承認された医師しか使用できないため、静岡県内ではまだ数施設でしかこの治療を行うことはできませんが、当院ではONYXでの多くの治療実績を有しています。

ONYX を用いた血管内治療
治療前

治療前

矢印の黒い部分がONYX

矢印の黒い部分がONYX
このあと開頭摘出術を行った

この病気は「細かな血管が迷路のように入り組んでいる」のが特徴で、精密検査によりこの迷路を少しずつ、根気強く紐解いていく作業が、安全な治療を行う上でとても重要です。私たちは画像解析技術と血管内治療を最大限に活用することで、複雑な迷路を単純明快な迷路に変えた上で開頭手術を行うという方法が、治療成績の向上に不可欠と考えています。そのためには手術の前に複数回のカテーテル治療を行うこともあり、治療にかかる期間は必然的に長くなります。したがって、この病気と闘うためには主治医と患者さんの信頼関係がとても重要だと感じております。

術前の画像解析と開頭摘出術
3D fusion imagingによる術前の画像解析

3D fusion imaging による術前の画像解析

手術の予測画像

手術の予測画像

実際の手術画像

実際の手術画像

血管が非常に入り組んでいるのがわかりますが、3D fusion imagingによる画像解析を駆使すると、どの血管をどのように処理すれば安全に摘出することができるのか、何度もシミュレーションを行ったのちに本番の手術を迎えることができます。

この記事に関するお問い合わせ先
脳神経外科

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更新日:2023年05月24日