もやもや病
もやもや病とは?
不思議な名前のこの病気は、脳を栄養する太い血管が徐々に細くなり、脳の血流不足を引き起こす病気です。細くなってゆく速度は患者さんによって様々で、幼少期から症状が出現するものから、高齢になって撮影した画像で初めて指摘されるものもあります。
正常な脳血管
もやもや病の脳血管
脳の血流が不足し始めると、一過性脳虚血発作や脳梗塞が生じます。とくに「過換気」や「息切れ」など、呼吸が速くなったときに症状が生ずるのが特徴的です。一方で、成人の場合、しばしば脳出血で発症することがあります。これは脳の血流不足を補うために生じた「側副血行路」という脆弱な血管に、長年にわたり負担がかかり、あるとき破綻することで生じるとされており、ときに命に関わったり(死亡率6〜20%)、重篤な後遺症につながることがあります。
「もやもや病」は厚生労働省の定める「特定疾患」です。一定の基準を満たすと、18歳未満では「小児慢性特定疾病」、18歳以上では「指定難病」に登録することができます。指定難病として登録されると、病状に応じて医療費助成などのサービスを受けることができます。詳しくは各都道府県の保健所にお問い合わせください。
治療
現在の医療水準では、お薬や血管内治療でこの病気を治したり、進行を止めることはできません。しかし、脳梗塞や脳出血の発症を減らすために、脳血流を増やす開頭手術が考案されており、多くの患者さんがこの手術を受けて、お元気に生活しています。脳血流を増やすには、脳以外を栄養している血管を脳血管に吻合し、血流を脳に「おすそ分け」する必要があります。一般的に、頭皮を栄養する血管や、頭の筋肉、硬膜などから、血流をおすそ分けしています。手術により脳梗塞や脳出血が発症するリスクは大きく下がることがわかっておりますが、手術をしてもなお、一定数の患者さんでは脳梗塞や脳出血が再発してしまうことも知られており、この手術にはまだまだ改良の余地があると考えています。
私たちは患者さんの脳血流の状態、血管の分布、年齢、頭の形、傷跡などさまざまな要素に配慮しながら、ひとりひとりに合わせたオーダーメイドな手術を提案しています。手術のあとも経過観察が必要であり、患者さんとはとても長いお付き合いになることが多い病気です。
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更新日:2023年05月24日